月例経済報告と景気行動指数の不一致
そもそも、現在の日本の景気は良いのか悪いのか、どちらでしょうか。
景気の判断については、日本政府としての公式見解が示される「月例経済報告」と「景気動向指数に基づく基調判断」を参照すればよいでしょう。
ざっくり言えば、月例経済報告は国内外の様々な指標を元に、最終的に「人」が景況感を判断したリポートです。
一方、景気動向指数は生産・雇用など景気との連動性が高い複数の経済指標から作成した複数のインデックスです。基調判断はその中の「現在の景気とほぼ一致して変動する」とされている「一致系列」を用いて「機械的」「自動的」に景況感を算出します。
ちなみに、景気動向指数はコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)の2種類に分かれます。CIは景気変動の大きさやテンポ(量感)を示す指数です。基準となる年を決めて、その基準年と比べた変化が分かります。DIは景気動向の方向性を示す指数です。経済指標を比較して、「改善」「変化なし」「悪化」に分類し、全体の傾向を割合(%)で算出します。
日本政府は長きにわたってDIを中心に見ていましたが、景気変動の大きさや量感の把握がより重要になったため、 2008年4月分以降、CIを中心とした公表形態に移行しました。
問題なのは、19年3月以降、人が判断する月例経済報告は景気に対して、輸出や生産の弱さに言及しつつも「緩やかに回復している」と表現しているのに対して、機械的に判断される景気動向指数に基づく基調判断は13年1月以来の「悪化(景気後退の可能性が高いことを示す)」と判断している点です。
このような事態は、CIによる景気動向指数に移行した08年4月以降、11年運用して初であり、どう判断すればよいか多くの人が戸惑っています。この不一致について、消費税増税の問題にからめて、国会でも取り上げられたのは記憶に新しいところです。
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