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購買力平価を使うことの限界

 GDP÷就業者数で表される国民経済生産性は、国際比較で用いられます。大きく変動する為替レートの影響や、物価水準の違いもあるのに、どうやって比較しているかといえば「購買力平価」という技術を用いているのです。

 購買力平価には、通貨の異なる国であっても、同じモノは同じ値段で買えるはずだという考えが基本にあります。OECDでは、約3000にもなる財・サービスを同じ量だけ購入する際、それぞれの国で通貨がいくら必要かを調べ、物価水準などを考慮して、各国通貨の実質的な購買力を交換レートで表しています。詳細を知りたい方は総務省の国際比較プログラム(ICP)のページをご覧ください。

 OECDによると2017年の円ドル換算購買力平価レートは、1ドル=99.594円でした。2017年の為替平均は112.13円でしたから、結構な差があることが分かります。

 ただ、そうした購買力平価ですが、完璧な指標とは言えません。OECD自身が「正確な測定値というよりも統計的な複合値」と述べています。つまり、いくつもの測定値から統計的に「だいたいこのぐらい」と算出しただけで、真の値はコレだと言い切れるわけではありません。

 また、2011年3月のOECD統計概要に掲載された「2008 Benchmark PPPs Measurement and Uses」では、推奨されない利用(Not recommended uses)として、「各国の厳密な順位付けを行う上での正確な尺度」(As precise measures to establish strict rankings of countries)と書かれています。果たして、国際比較の順位付けで日本が21位だとするのに購買力平価を使うのは正しいのでしょうか?

 購買力平価が、様々な財・サービスに目を向けているとはいえ、ほかにも産業構造、規制、文化や嗜好など考慮すべきものが多い中、たった1つの交換レートで全てをうまく説明できるとは思えないのです。

「生産性」という指標を改善するためには?

 とはいえ、日本の産業力を向上させ、私たちがより良い生活を送るには、生産性を計測すべきことは同意できます。測らなければ何も分からないのです。

 ただし、海外と比べるよりも、国内に完結して、かつ産業別に計測した時系列データを見るのが良いのではないでしょうか。国内の働き手も減り、需要も供給も減る中で、労働・資本生産性の低下だけは避けなければいけません。

 生産性については、数字だけに右往左往するのではなく、指標を算出するプロセスに目を向けた議論が求められます。