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手っ取り早く労働生産性を上げるには?

 手っ取り早く労働生産性を上げるには、機械をバンバン導入して自動化を図り、労働者をバンバン解雇すればよいのです。2人でやっていた作業を、機械の導入により1人でやるようになれば、労働生産性は倍になります。

 ただし機械を導入しても生産量に変化が無いとなると、資本生産性は低下します。今回の原稿を書くために私が愛用するMacBookを買い替えたとしても、生産量には大きな変化があるとは思えません。とすると資本生産性が悪化するだけ、そして私の財布が少しピンチになるだけです。企業の持続可能な成長を考えると、あまり賢い選択とは思えません。

 つまり生産性向上を目指すなら、労働生産性のみに目を向けるのではなく、資本生産性の向上、全要素生産性の向上も合わせて考えなければいけません。それなのに多くの人が労働生産性にばかり目を向ける現状は、少し違和感を覚えます。

 そもそも論ではありますが、もう1度、労働生産性の国民比較表に目を向けてください。失業率が10%を超えるイタリアが11位、スペインが16位です。では失業率が低下して就業者数が増えれば、労働生産性を維持したままGDPが向上するでしょうか?

 何となく「そうではないだろうな」と感じるでしょう。なぜなら、労働生産性で示された値は、各個人の平均的なスペックではなく、単なる割り算だからです。

 ここが生産性指標の難しいところです。GDPや就労者数は、需要と供給のバランス、インフレ率、所得など、国ごとに複雑に入り組んだ経済指標の1つにすぎません。果たして、経済状況の全く違うイタリア・スペインと日本を比較するのは、本当に正しいのでしょうか?

ツッコミ所が多過ぎる「生産性」という指標

 「生産性」という指標には、ツッコミ所が多過ぎるように感じます。

 確かに生産性の向上は必要ですが、現在使われている指標をそのまま用いて海外と比較するのには、疑問を呈すべきではないでしょうか。そうした疑問がスルーされたまま「生産性向上を!」と訴えるのは、感情としては賛同したいものの、データサイエンティストとしては「定義が曖昧過ぎる」と主張せざるを得ません。

 「生産性」という指標には、まだまだ疑問点があります。次回は延長戦として残りのツッコミ所を取り上げた後、ではどうすべきかについて記したいと思います。