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「本当の数字」は誰にも分からないのではないか

 そもそも、求人の総数からは「温度感」が分かりません。「人手不足だから」という求人も、「ハローワークって無料だし、とりあえず出しとこ」という求人も、同じ1件です。自身の就職活動を思い返してください。本命の企業も、滑り止めの企業も、同じように応募しませんでしたか? 企業側は本命の学生と何となく応募してくる学生の見極めに苦労するそうですが、それと同じです。

 ちなみに、インターネットで「ハローワーク カラ求人」と検索するといろんなコメントにヒットします(カラ求人とは「企業が採用する気がないのに出している求人広告」という意味)。ハローワーク側もカラ求人対策を打てていないようで、せっかくハローワークや求人をした企業に面接に行ったのに何だ……という怨嗟(えんさ)の声に出会えます。

 もっと言ってしまえば、すべての求人が企業から自発的に出されているとは限りません。総務省行政評価局が2012年1月に公表した「公共職業安定所の職業紹介等に関する行政評価・監視の結果」によると、ハローワークには2011年度時点で少なくとも1,600人の求人開拓推進員がいて、彼らが求人開拓を行っているようです。

 2011年3月には、職業安定局首席職業指導官通知として求人開拓推進員1人当たりの年間求人開拓数の目標が480人以上から 735人以上に上方修正されています。こうした状況から考えて、「とりあえず出しとこ」求人が一定数あっても不思議ではありません。

 こうした状況を踏まえると、急上昇する求人件数のすべてを人手不足と見るのは早急に思えます。

 それは求職者数も同様です。雇用保険の失業給付を受け取るには、ハローワークにて求職申し込みが必要です。求職者の中には本気で仕事を探している人もいるでしょうが、中には失業給付目当てで求職を申し込んで、給付期限を迎えると既に決まっている次の会社に就職する人もいるかもしれません。

 結局のところ、求人・求職いずれも「本当に人手が不足している企業」と「本当に働きたい人」の実態がつかめないのです。実態を知るにはゴミデータが多すぎる印象です。データ分析の原則は「garbage in, garbage out」すなわち「無意味なデータを入れると無意味な結果が返される」のです。

雇用統計の対象がハローワークだけでは狭すぎる

 このように有効求人倍率の内訳をのぞいてみると、変なところが少なからずありました。これらを差し置いたまま「景気を評価する指標の1つ」と見なすことには疑問を抱きます。私は有効求人倍率を否定したいのではなく、改良・改善して、より景気判断に使える雇用統計にしたいと考えています。

 そのためにも、ハローワークによるカラ求人対策は急務ですし、抜本的な見直しとしては、民間の求人事業が数多くある中でハローワークの数字だけで有効求人倍率を計測する是非が議論されるべきでしょう。もはや民間経由で職を決める人が大多数です。雇用統計として計測している範囲がハローワークだけというのは、狭すぎるのではないでしょうか。

 本連載をキッカケに、様々な改善が行われ、より使える指標になるのを願っています。