公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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2020年5月14日、政府は39県の緊急事態宣言を解除しました。また、同月21日には大阪、京都、兵庫、同25日には残っていた東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道の宣言を解除しました。今後は新規の感染拡大を徹底的に防止してリスクを抑えつつ、いかにして経済活動を回し続けるかが焦点になってくるでしょう。
5月4日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議から発表された「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では「業界団体等が主体となり、また、同業種だけでなく他業種の好事例等の共有なども含め、業種ごとに感染拡大を予防するガイドライン等を作成し、業界をあげてこれを普及」と提言しており、自粛解除後の「リスク」と「経済」のバランスに言及しています。
これを受けて、さっそく小売業12団体が連名で「小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」を発表。従業員の安全、顧客の安全を確保しつつ、店舗を運営する対策が端的にまとめられています。いよいよ経済活動が本格再開をしようとしているんだな、と実感します。
この2カ月を振り返ると、新型コロナの影響で外に出るのもままならず、月の支出金額も大きく変動しました。最新の家計調査(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)によると19年3月と20年3月の消費支出の実質増減率は8.1%と大きく減少しています。
単純な金額差分では以下のグラフのようになります。「外に出るための費用」「外に出なければ消費できない費用」が如実に減少していると分かります。ちなみに、「その他」の落ち込みの大半は「交際費」です。そう言えば筆者も、めっきり交際活動が減りました。
止まっていた経済が動き出せば、これらの落ち込みは再び元に戻るでしょうか。識者の見解は分かれるでしょうが、間違いないのは「統計を通じた経済活動の確認」の重要度が高まってくる点です。現状を正確に把握することは欠かせません。
しかし、あまり注目を集めていませんが、新型コロナウイルスの影響で調査の中止、延期、あるいは調査方法の変更が相次いでいます。統計は、調査のタイミングを変えたり、調査方法を変えたりするだけで、結果が変わる繊細な生き物です。コロナ前と同じようにデータの連続性があると言えるのか、以前に比べて景気が悪いと分かっても比べられる精度なのか、分からないことが多いだけに、いろいろ検討することが多くなるでしょう。
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