公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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2020年4月7日に出された緊急事態宣言は、5月4日に5月末までに延長されました。
対象は全都道府県ですが、13の特定警戒都道府県は引き続き極力8割の接触削減に向け「これまでと同様の取り組みが必要」とされました。安倍晋三首相は、それ以外の県は「感染拡大防止」「社会経済活動の維持」の両立に配慮した取り組みが必要だと、第33回新型コロナウイルス感染症対策本部で説明しました。一方、5月の連休明け以降、一部地域では休業要請などの緩和や、緩和に向けた準備も進んでいます。さらに14日に開かれる専門家会議を受けて緊急事態宣言を解除するための動きも出てきそうです。
緊急事態宣言は新たに新型コロナウイルスに感染する数を減らすためです。不要不急の外出を減らせば、人と接する機会も減り、その分だけ感染するリスクは下がります。
前回の連載では、新型コロナウイルスの感染対策として急に注目を浴びたテレワークの浸透率に着目しました。あれから2週間が経過しましたが、私の周りでも「ビジネスの会議はZoomを使う」「顧客と会えない前提で考える」とするマインドは増えた印象です。
新型コロナウイルス感染症対策を取りまとめた内閣官房のホームページでは、人の動きの変化が毎日更新されています。全国の繁華街、観光地、都道府県境をまたいだ往訪は、前年あるいは感染拡大前と比べて40~80%も減少しています。
では、こうした自粛の取り組みは、どの程度数字として表れているでしょうか。
厚生労働省の時系列データで分かる「感染者数」
厚生労働省が毎日発表している「新型コロナウイルスに関連した患者等の発生について」リポートを基に、2月19日以降のその日発表された新たな国内感染者数を折れ線グラフにしました。ただし厚生労働省の発表にあるように、チャーター便帰国者事例、空港検疫事例、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染者を除いています。
4月11日の714人(厚生労働省発表)をピークに、以降は徐々に下降傾向にあります。もちろん、7日に発令された緊急事態宣言が数日で効いたから……ではありません。
20年2月29日にWHOで発表された、中国で起きた新型コロナウイルスに関する事象をまとめた「Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 」によると、感染してから兆候・症状が表れるまで「mean incubation period 5-6 days, range 1-14 days(平均潜伏期間5~6日、1~14日の範囲)」と明記されています。
さらに、いざ兆候・症例が表れてから、PCR検査を行い、陽性の結果が報告されるまで、平均8日程度要しているといわれています(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議20年3月19日より)。
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