異なる職務内容でその違いに応じた賃金を支給している企業があったとします。均衡待遇による賃金格差「均衡格差」です。そして下図のように、大騒ぎするほどではないにしろ気になる「均衡格差」があるとしましょう。

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 厚生労働省が公開している「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」には、均衡待遇による格差を減らすためには、労使で話し合いをし、非正規雇用の賃金・待遇を「向上」するよう要請しています。

 しかし、均衡格差を是正するために正規雇用の賃金が「引き下げられる」可能性はないのでしょうか。差を狭める方法は、何も非正規雇用の賃金を上げるだけとは限りません。

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 先ほどの「検討マニュアル」には「基本的に、労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げること(不利益変更)は望ましい対応とはいえません」と明記しています。しかし、「望ましくない」としていますが「やるな」とは書いてありません。

 お笑い芸人・ダチョウ倶楽部のネタ「押すなよ、絶対押すなよ」では、押された上島竜兵さんは怒ったふりを見せながらも、実際には「それを待っている」のと同じように、望ましくないとされていることを待っている経営者がいないとは言い切れません。

 労働者有利の市場ならまだしも、現在は企業有利の市場です。実際には、その企業すら消滅してしまうかもしれない一大事が起きています。そうなるとトータルで賃金が下がるのをよしとするか、それとも仕事を辞めるかの二択を迫られるかもしれません。そうなれば「同一労働同一賃金」の本来の理念である、賃金上昇による格差解消が崩れていきかねません。

 新型コロナウイルスによる経済減速の中、そうならないよう、厚生労働省は厳しく目を光らせてほしいものです。場合によっては過重労働撲滅対策班のように対策チームを立て、企業を厳しく監視しなければならないでしょう。悪質な「格差解消」が頻発するようなら、1年後に迫っている中小企業への適用を1年遅らせるのも1つの手段です。

 何も、こんな降って湧いた不況というタイミングに法律が施行されることになるとは……と思うのは私だけでしょうか。今後が気になります。

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