実際、総務省統計局の「小売物価統計調査」の消費者物価地域差指数(全国平均=100を基準として各地域の物価水準を比較した指数。地域間の物価水準の相対的な違いを表現する)の中でも、住居費目と賃金の相関係数が非常に高く(0.74)なっています。

 疑似相関の可能性もありますが、「賃金の高さ=住居費目の高さ」であれば、どれだけ良い仕事をしても住居費目が低い地方(最も低いのは愛媛県の82.7)だと、東京相場に比べて賃金が安い……という可能性は非常に高いのです。

賃金と住居費の間には相関関係があるように見える
賃金と住居費の間には相関関係があるように見える
総務省統計局「平成30年賃金構造基本統計調査」の都道府県別賃金および 同「2018年小売物価統計調査 住居費目消費者物価地域差指数」より(単位は千円)
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 そういうものだと割り切ってしまってよいのでしょうか。「均等」とは、勤める会社の中での話であって、社内での性・年齢による差別はいけないけれど、地域間で差があるのは仕方がないのでしょうか。そもそも地域格差をなくすべきではないでしょうか。

 しかし、アルバイトはどの店舗であっても時給を同じにしているコストコのような企業もあります。同一労働同一賃金の最たる例としてよく紹介されます。

 地域による格差のない賃金。これこそが本来の「地方創生」につながるのではないでしょうか。地方振興策によって、どれだけ地方に仕事をつくっても、住居費目が低いことで賃金が低くなるようであれば、地方で働きたいと思う人は増えにくいでしょう。

危険な「均衡」思想が新型コロナウイルスで生まれる?

 現在、新型コロナウイルスを端緒とする「世界恐慌」ともいうべき経済混乱のまっただ中にいる日本において、雇用は死活問題となります。1990年卒以降のバブル崩壊による就職氷河期世代を「ロスジェネ世代」と表現しますが、2020年卒以降が「新ロスジェネ世代」となりかねません。

 ここしばらくは求職者有利といわれていましたが、景気の減退でおそらくすぐにでも求人者有利・企業側有利となるでしょう。そうなると真っ先に行われるのが人員整理や給料カットです。

 そのために同一賃金同一労働が悪用されることを、かなり危惧しています。