正社員の間でも男女の賃金格差は大きい

 日本における「不合理な待遇差」とは、正社員と非正社員に限った話でしょうか。そんなことはありません。

 まず思い浮かぶのが、欧米同様の性別格差です。平成30年賃金構造基本統計調査を確認します。雇用形態別の賃金を見ると「正社員・正職員」においても、男女の性別で差があります。

正社員・正職員における男女別賃金推移
正社員・正職員における男女別賃金推移
厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より(単位は千円)
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 すべての産業を合算しているので、「もともと女性が多くて、かつ賃金が低い特定産業」「もともと男性が多くて、かつ賃金が高い特定産業」があれば、差が広がる原因にはなります。とはいえ全産業において50代で1.5倍もの差が開くほどの影響を及ぼすような産業があるように思えません。

 それとも、これが「均衡待遇」だというのでしょうか。それだと女性は男性と同じような職務に就いていない(就けない)といっているに等しいでしょう。「女性活躍」をうたっている政権ですから、ここまで「均衡待遇」に差が出たなら是正の要請ぐらい出してほしいものです。

 ちなみに、正社員・正職員ではない人たちで見ると、こちらにも男女差がありますが、正社員・正職員に比べると小さくなっています。

正社員・正職員以外における男女別賃金推移
正社員・正職員以外における男女別賃金推移
厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より(単位は千円)
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地域格差のない賃金こそが本来の「地方創生」

 さらに考えられるのが、地域格差です。最低賃金は以前に「最低賃金を上げると、本当に貧困層を救えるのか」で紹介した通り、都道府県ごとに大きく違います。つまり地域が異なれば、得られる賃金にも差が出てくると考えられます。

 同じく平成30年賃金構造基本統計調査によると、都道府県別の賃金は以下のように散らばっています。

都道府県別賃金
都道府県別賃金
厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より(単位は千円)
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 東京都と宮崎県で、約14.5万円の差があります。その差を生む要因と考えられるのが物価です。東京と宮崎でチェーン店の牛丼を食べても値段に大きな違いはないでしょうが、家賃や交通費は大きな差がありそうです。

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