公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。

※文中にある各種資料へのリンクは外部のサイトへ移動します

連載バックナンバーはこちら

 2020年3月11日、高野連(公益財団法人日本高等学校野球連盟)は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、19日から開催するはずだった第92回選抜高等学校野球大会(春のセンバツ)を中止すると発表しました。

 春のセンバツには1924年から始まる長い歴史がありますが、42年から46年まで5年間、太平洋戦争に起因する中断はあっても、1度開催を決めながら中止するのは初めてです。95年の阪神大震災でも、2011年の東日本大震災でも開催されたという過去を鑑みれば、今はまさに緊急事態なのだと改めて感じます。

 報道をみる限り、関係者の皆さんは直前まで無観客試合を検討されていたと思うのですが、中止を決定する前日の3月10日に、「全国規模のイベントについては中止、延期、規模縮小等の対応を要請したところですが、専門家会議の判断が示されるまでの間、今後おおむね10日間程度はこれまでの取組を継続いただくよう御協力をお願い申し上げます」(第19回新型コロナウイルス感染症対策本部)と安倍首相が要請した時点で、「これ以上は先に延ばせない」と判断したのだと推察します。

 半月先が見通せない不確かな状況下で、それでも意思決定を迫られる。それが責任者のつらさかもしれません。

 大会の中止について、毎日新聞社の丸山昌宏社長は「安心して甲子園でプレーできる環境を確保するのが難しい」、高野連の八田英二会長は「高校野球は学校教育の一環。教育の原点に返って、苦渋の決断をした」とコメントしています。私は「選手のために中止した」という言外の意味を感じ取りました。

 「選手ファースト」。それは常にそうあるべきなのですが、現在の高校野球を取り巻く状況は、本当に選手ファーストなのでしょうか?

球児は想定の範囲内で減っている?

 高校生の野球(硬式)部員は、全国に何万人いるでしょうか。これは高野連のホームページに統計が掲載されています。その結果をグラフ化しました。

高校生の野球(硬式)部員の推移
高校生の野球(硬式)部員の推移
日本高等学校野球連盟ホームページの統計情報を基に作成
[画像のクリックで拡大表示]

 1990年ごろまでは増加し、その後横ばい、そして98年ごろから再び上昇し、2005年ごろから横ばいとなります。山を登っては横ばいで推移するような動きを繰り返しています。

 横ばいの中でも14年に過去最高の17万312人を記録しますが、その後しばらくすると急な坂を転げ落ちるかのように減少し続けます。1年前の19年には14万3867人になっています。今から20年前の1999年と同程度です。

次ページ 1年生の野球部員は減っているが、継続率は長期的には上昇