本当に給料は増えていないのか?

 前述したデータを見ると日本は比較的、実質賃金上昇率と経済成長率が連動している国といえます。そこでさらに賃金の内訳を調べていきましょう。

 ちなみに自分の現在の給料と、5年前、10年前の給料を見比べて、1円も増えてない(むしろ減っている)読者はどれくらいいるでしょうか。企業の正社員に限って言えば、該当する人の多くは60代以上などに絞られるはずです。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、平成の約30年間で男女別賃金は以下のように推移していると分かりました。女性の賃金は緩やかに上昇し続けていますが、男性は特に1997年から2013年ぐらいまで横ばいが続いていました。

女性の賃金は緩やかに上昇しているが男性は横ばいの期間が長い
女性の賃金は緩やかに上昇しているが男性は横ばいの期間が長い
性別賃金の推移(単位は千円、「賃金構造基本統計調査」より)
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 ただし、この賃金は産業、企業規模、最終学歴、雇用形態、年齢各層の違いを全て取っ払った「全体」の数値です。男女計も1997年から2013年までほぼ横ばいに見えますが、産業の入れ替わり、女性の社会進出、高齢雇用者の増加、人手不足による賃金上昇などが起きている中、層別に見れば違いが出てくる可能性があります。

 それらプラス分、マイナス分を合算して名目賃金は長らく横ばいだったわけです。そうならば、層別に見ておきたくなります。

 ちなみに男性の20代~40代の賃金を年齢層別に調べてみると、以下のように推移していました。ミルフィーユのような層ができていて、年を重ねるにつれて賃金は増えています。つまり給料が増えないとはいっても、実際は増えている人が大半のはずです。

30代後半から40代前半の賃金は下がっている
30代後半から40代前半の賃金は下がっている
男性の年齢別賃金の推移(単位は千円、「賃金構造基本統計調査」より)
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 では、なぜ「増えない」と感じるのかを考えてみると、本来もらえるはずだった給料が何らかの理由で想定を下回ってしまったか、あるいは物価上昇が原因で相対的に給料を少なく感じてしまったかのいずれかだと思われます。

 しかし、バブル崩壊後の大半の期間はデフレでしたし、かつ人間は「貨幣錯覚」といって実質値ではなく名目値で物事を判断する傾向があります。よほどのインフレでもない限り、実質値に換算して「増えない」と感じる可能性は限りなく低いのです。大半の人は「景気がいいと政府が言うほどもらえていない=増えない」と思っているはずです。

 実際、グラフからも分かる通り、30代後半~40代前半の07年ごろからの落ち込みは大きく、07年と7年後の14年とを比較すると、30代後半は2.1万円、40代前半は3.7万円も減っています。ちょうど団塊ジュニア世代が該当しますね。

 団塊ジュニア世代からすれば、「前の世代の人たちのように賃金が増えない=賃金が上昇しない」と感じるのも無理ありません。

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