経済が成長すれば賃金も成長するのか?

 一般に、経済が成長すれば、物価や賃金も連動して上昇するといわれます。日本で賃金が上昇しないのは低成長にあえいでいるからでしょうか?

 そこで、先に挙げた13カ国の1991年以降の実質賃金上昇率と実質経済成長率で散布図を作製してみました。その結果から洞察するに、多少の例外はありますが、経済成長率が上がると賃金上昇率も上昇する関係がうかがえます。

実質賃金上昇率と経済成長率はおおむね相関している
実質賃金上昇率と経済成長率はおおむね相関している
実質賃金上昇率(横)と経済成長率(縦)の散布図(OECD「Average annual wages」より)
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 ところが、この散布図を「国別」で見ると様相は大きく変わります。国別に色を塗り、さらに国別に傾向が分かる線を引いてみました。大半の国では線が右肩上がりになっている(実質経済成長率が上がると実質賃金上昇率が上がる)ものの、中には横ばい、さらには右肩下がり(実質経済成長率が高まると実質賃金上昇率が下がる)の国もあります。

実質賃金上昇率と経済成長率の相関は国によって様々
実質賃金上昇率と経済成長率の相関は国によって様々
実質賃金上昇率(横)と経済成長率(縦)の散布図(国別で色分け)
(OECD「Average annual wages」より)
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 1991年から2018年まで28時点での分析ですが、正の相関関係が表れたのは13カ国中、オーストラリア(0.49)、カナダ(0.30)、イタリア(0.21)、日本(0.42)、韓国(0.45)、メキシコ(0.43)、英国(0.36)、米国(0.49)の8カ国でした。カッコ内は相関係数を表しています。

 面白いのは、フランス(-0.24)、オランダ(-0.38)、スペイン(-0.25)、スイス(-0.27)の4カ国で負の相関関係が表れました。

 「経済が成長しても、全ての国で賃金が連動して上昇するとは限らない」と分かった以上、何か論理を間違えている可能性があるかもしれません。

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