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 公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。

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 内閣府の「景気基準日付」を見ると、現在は戦後最長の景気拡大期だそうですが、新型コロナウイルスと消費増税のダブルパンチで、もはや「虫の息」のように見えます。

 内閣府が発表する「月例経済報告」は2020年2月時点で「緩やかに回復している」と表現しているものの、経済活動の自粛が続く現状を見ると「景気は弱まっている」「景気は悪化している」と表現されるのも時間の問題かもしれません。

 ただし、そもそも論として、「戦後最長の景気拡大期」において、国民のどれくらいが「景気いいね」と実感できているのでしょうか。景気の良さを肌で実感しようにも、1つの目安となる給料の数字がそもそも名目ベースでも「あまり増えていない」と感じる人が多く、「景気の良さ」を感じていないと思われます。

 25年間という長いスパンで見ると、日本の名目賃金は驚くほど増えていません。OECD(経済協力開発機構)加盟諸国の統計(「Average annual wages」を参照)によると、主要13カ国の1994年と2018年の名目賃金上昇率は日本だけがマイナス4.54%とマイナス成長となっています。四半世紀前と比べて、名目賃金は日本だけが減っているのです。

名目賃金の上昇率は日本だけがマイナス
OECD加盟諸国のうちGDPの多い13カ国の1994年から2018年にかけての名目賃金上昇率(OECD「Average annual wages」より)

 12年に誕生した第2次安倍政権以降、アベノミクスにより賃金は増えたという意見もあるでしょう。そこで12年と18年を比べて名目賃金上昇率を調べてみました。結果、確かに2.9%成長していると分かりました。スペインやスイスよりは高いようです。

第2次安倍政権以降の名目賃金上昇率はプラスだが……
OECD加盟諸国のうちGDPの多い13カ国の2012年から18年にかけての名目賃金上昇率(OECD「Average annual wages」より)

 どの国と比較するかで受け止め方は変わるでしょうが、少なくともGDP(国内総生産)の規模で近しいドイツや英国に比べて上昇率が低いのはなぜだろうと首をかしげたくなります。

 多くの国々では名目ベースで賃金が増えているのに、どうして日本では増えなかったり、上昇率が低くかったりするのでしょうか。何らかのボトルネックを解消すれば、賃金が増えるのでしょうか。