人生100年時代のためにサードプレイスの発見を

 長時間労働の規制に対して「残業しないと困る人もいる」と発言する方もいらっしゃいます。残業代が減ると困るという金銭的な問題だけでなく、仕事が早く終わると居場所がなくて困るという話もあります。実際、働き方改革以降、会社に遅くまでいられないし、かといって家に早く帰っても居場所がない人が、コンビニでチューハイを買って近くの公園で時間をつぶすなんて行動を、マーケティングリサーチを通じて知りました。

 個人的体験談ですが、私の祖父は本人の希望もあり、70歳を超えても技術者として雇用され続け、夕方に家に帰ってきて、晩酌、後はゴロゴロとテレビを見る生活を続けていました。

 しかし、いよいよ働き続けるのが辛くなり引退すると、仕事をしていた時間に何をすればいいか分からない状態になりました、朝は喫茶店のモーニングサービスに1時間半ほど出掛けるものの、残りの時間はテレビばかり見ている生活になってしまったのです。

 「平成28年社会生活基本調査」では、1日の行動のうち、睡眠や食事など生理的に必要な「1次活動」、仕事や学業、家事など社会生活を過ごすうえで義務的な性格の強い「2次活動」、各人の自由活動を「3次活動」と定義した統計結果がまとめられています。

年代別に見た時間の使い方
年代別に見た時間の使い方
赤が1次活動、緑が2次活動、青が3次活動(単位:分)(「平成28年社会生活基本調査」より)
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 私の祖父の場合は70歳過ぎての遅めの定年でしたが、多くの人が定年退職をし始める60代前半から1次活動と3次活動の時間が増えていくのが分かります。では3次活動の内訳を見てみましょう。

年代別に見た3次活動の内訳
年代別に見た3次活動の内訳
「平成28年社会生活基本調査」より(単位:分)
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 私の祖父の例と同様に、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」で過ごす時間が多いようです。

 人間は長い間の習慣を突然変えられません。今までやったことのないことに挑戦しても、習慣化しなければ長続きしないものです。そうなると今まで習慣化してきた「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」を見続け、退職後はその時間が長くなるばかりです。それはそれでよいという考え方もあるかもしれませんが、皆さんはそれでよいでしょうか? つまり老後の生活を充実させるなら、今の生活を充実させなければいけません。

 私自身、家からあまり出ずに、テレビばかり見る祖父の背中を見ていて、仕事から早く帰って自分の趣味・娯楽に没頭したり、学業以外の勉学に励んだり、社会活動に従事して、自宅と会社以外のサードプレイスを見つけよう……とずっと考えていました。そのためには、仕事だけに縛られて自由な時間が持てないようではまずいのです。過労死を防ぐためにも、そして「人生100年時代」の後半を豊かにするためにも、労働時間の規制は重要なことです。

 命をかけるほど本気で向き合える仕事を見つけることは大事だと思います。しかし、それによって本当に命を失ってしまえば悲しむ人は大勢いるし、家族が苦しむことにもなります。そして何よりも長い人生を考えると「仕事だけにいそしむ」ことは本当に正しいのでしょうか。

 1つの場所にとどまって、それこそ残業代目当てに夜遅くまで会社に残るより、副業して小銭を稼ぐとか、仕事の同僚とは異なった人たちと活動するなど新たな人とのつながりを発見する方が人生にとって有意義ではないかと考えます。

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