以降、政権が交代しても、その傾向は途絶えていません。与党が自由民主党から民主党に代わっても同様です。小泉内閣から安倍内閣(2回目)までの、質問主意書に対する不誠実答弁が含まれる割合は以下の通りです。質問主意書が増え始めた小泉内閣からの数字を出してみました。
内閣 | 衆議院 | 参議院 |
---|---|---|
小泉内閣 | 24.76% | 24.24% |
安倍内閣(1回目) | 29.98% | 26.09% |
福田内閣 | 30.66% | 26.95% |
麻生内閣 | 29.9% | 28.47% |
鳩山内閣 | 25.29% | 32.77% |
菅内閣 | 26.37% | 26.73% |
野田内閣 | 28.7% | 26.88% |
安倍内閣(2回目) | 37.93% | 38.66% |
確かに第2次安倍内閣は比率が高いですが、とはいえそれ以外の政権も特別低いともいえません。不誠実なのは、安倍政権ではなく官僚なのでしょう。
また、安倍政権に文句を言うなら、自身が政府・与党におられた際になぜ変えなかったのかと批判されざるを得ない政治家の方々が大勢いるのではないでしょうか。
質問主意書のルールを変えるべきだ
木で鼻をくくったような答弁が続く理由として「質問主意書の件数が多いから官僚の負担となり、十分に回答できないから」と説明する人も多いようですが、不誠実答弁の始まりと質問主意書が増加した時期には6年~8年ほどのタイムラグがあります。その説をうのみにはできません。
とはいえ、このまま放置もできません。現状は「木を隠すなら森の中」みたいなものです。不誠実な答弁群には、質問主意書が意味不明だから答えられないものだけでなく、内閣や官僚が真正面から答えたくない答弁が紛れ込んでいます。質問主意書によって得られる「国民の利益」が台無しです。
まず質問主意書のルールを、もう少し柔軟にしませんか。まずは(1)なぜ7日以内でなければならないのか、(2)質問の回答にかかるコストは無尽蔵でよいのか、(3)主意書自体の品質確認は不要でいいのか、について国会で議論されるべきだと考えます。
特に(2)と(3)は重要です。
質問主意書をいっぱい出している=スゴイ、仕事をしていると思われがちですが、大勢の官僚の涙と血税を犠牲にしてまで追うべき「量」とは何でしょうか。この20年の歴史が「量はこなせる」と証明しています。見るべきは「量」ではなく「質」です。
権力を監視するメディアが、質問主意書という名の下に行われている「権力の乱用」にもっと注意を払うべきです。国会が終わる度に役人へ無記名のアンケートを行い、「痛いところを突いてきた質問主意書を提出した政治家ランキング」「全く無意味な質問主意書を提出した政治家ランキング」を作るのはどうでしょう。野党の働きぶりをチェックするのもメディアの仕事ではないでしょうか。
また、不誠実回答文に対しては議長の職権をもって「再提出」とする制度を検討してもよいのではないでしょうか。衆参議長は不偏不党であり、与野党の立場を超えて、憲政の良心に従い「さすがに不誠実ではないか」と突き返すぐらいの権力を有するはずです。
衆参議長は、当選回数の多い議員が就く重職です。理屈上、就任は議院において選出されるもので、内閣による指名ではありません。首相ににらまれるのが怖いから「再提出」が言えないのなら、ブラック企業の”名ばかり管理職”と何が違うのでしょう。
このまま官僚も内閣も政治家も得をせず痛み分け、国民だけが損をしている構図から抜け出し、緊張関係が築ける日が本当に来てほしいものです。
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