一方、その陰でおざなりな答弁書も目立ちます。特に第2次安倍政権になって、そのような傾向が顕著に見られると批判する政治家・マスコミの方もおられます。例えば以下の初鹿明博衆議院議員の質問主意書と回答となる答弁書を読んでください。

一 来年度の概算要求において「桜を見る会」の予算額を前年度の三倍の額で要求したのはいかなる理由からでしょうか。

二 過去五年、参加者数が増加している一方で、会場等設営業務、飲食物提供業務のどちらについても、参加者一人当たりの単価が増加していますが、この金額が妥当であったか検証すべきだと考えますが見解を伺います。

第200回国会質問第七号質問主意書より抜粋

 内閣府としては、「桜を見る会」の令和二年度概算要求において、テロ対策の強化や混雑緩和のための措置などの近年に講じた改善点を反映させるなど、実態に合わせた経費を計上したところである。

第200回国会内閣衆質二〇〇第七号答弁書より抜粋

 実態に合わせた経費としながらも、なぜ昨年の3倍になるのかについて真摯に答えていません。『北の国から』じゃありませんが、思わず「誠意って何かね?」と問いたくなります。

 そこで今回は、質問主意書の「可視化」に挑戦してみます。年初に「2020年、『データジャーナリズム元年』への期待と懸念」を書かせていただきました。書いた手前、自らデータジャーナリズムを実践しようというわけです。

プログラムを組んで質問主意書関連のデータを収集

 過去提出された質問主意書は、全て衆参議院ホームページにて確認できます。そこで、昭和22年(1947年)の第1回国会から、令和元年(2019年)の第200回国会まで、衆参両方を対象に質問主意書に関する全てのデータを取得しようと考えました。

 といっても、手動でコピー&ペーストしていると膨大な時間がかかります。そこで、機械の力を借りることにしました。具体的には「R(アール)」と「Python(パイソン)」というプログラミング言語を使って、「WEBスクレイピング」と呼ばれるWEB上のデータを抽出・収集する手法でデータを収集しました。

 プログラミングのコードは掲載しませんが、全体で150行程度です。まとまった時間が必要だったので年末年始にゴリゴリとプログラミングしました。久しぶりだったので書き方を忘れてしまい、完成まで半日程度かかりました。現役エンジニアなら1時間も要しないでしょう。

 ただし、参議院と衆議院でホームページの作りが全く異なり、かつ文中に文字化けしたテキストが含まれていたため、データ収集から成形までに3日程度かかりました。「何もここで独自性を発揮しないでよ!」と思わず叫びました。ちなみに、圧倒的に実装しやすかったのは参議院です。

「質問主意書」の可視化に挑む

 まずは衆参ごとに、各国会で質問主意書に対して、何件の答弁書が回答されたかを可視化してみましょう。まれに質問主意書を提出した後に撤回される場合もありますが、基本的には「質問主意書の数」=「答弁書の数」と考えてよいでしょう。

衆議院第1回国会~第200回国会までの質問主意書に対する答弁書の件数
衆議院第1回国会~第200回国会までの質問主意書に対する答弁書の件数
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参議院第1回国会~第200回国会までの質問主意書に対する答弁書の件数
参議院第1回国会~第200回国会までの質問主意書に対する答弁書の件数
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 衆参共に、第1回国会後からしばらくは活発に質問主意書が提出されていたようですが、その後次第に少なくなっています。55年体制になっても、1993年に非自民系連立の細川政権が誕生しても、事実上は休眠状態だったといっても過言ではありません。

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