では、どのようにダッシュボードの制作に着手し、評価を得たのか。ダッシュボードにまつわる話を聞いてみました。

なぜGitHubで全てが公開されたのか?

 東洋経済オンラインのダッシュボードを見て、筆者がもっとも衝撃的だったのは、ソースコードやデータなどの全てをGitHub(プログラムコードや各種データなどを保存、公開するウェブサービス)上に公開してきた点です。しかも、必要に応じて誰もが「プルリク(データ修正の要請や機能追加の提案)」をできるのです。これは非常に画期的でした。荻原さんいわく「日本で唯一だと思う」とのことです。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」(東洋経済オンライン)
「新型コロナウイルス国内感染の状況」(東洋経済オンライン)
※荻原氏より提供
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 皆さんは、どのメディアでも「データを全て公開しているのでは?」と思われるかもしれません。しかし、目的のデータを利用する際に、パソコン上で利用したいデータを一つ一つ表示させて、それをコピー、あるいは書き写さなければならないダッシュボードは、正確には「公開している」とは言えません。CSV形式で収集、整理されたデータを第三者が簡単に入手して手軽に分析できることが、本当の意味での「公開」です。

 GitHubで全てを公開している理由を、「報道の透明性のため」だと荻原さんは言います。

 「新聞社やテレビ局で公開されるデータに『出典:厚生労働省』とだけ表記されても、どこを見ればよいのか、一般の人がそのデータを手に入れられるのかなどは、普通の人には分かりません。ですから、情報の開示を丁寧にすべきだと思っていました」(荻原氏)

 JX通信社や東洋経済のダッシュボードや日本経済新聞社「日経ビジュアルデータ」など、そして本連載もそうかもしれませんが、様々なデータビジュアライゼーションやデータジャーナリズムには「見せ方が恣意的」という批判がついて回ります。

 実際、JX通信社が公共性を鑑みて公開している新型コロナウイルスの「感染事例が報告された場所の情報」(スマートフォン向け地図)に対して「データが勝手に削除されたのは権力に屈したからだ」といった批判をSNSで受けました(実際には読者の単なるデータの見落としだったのですが)。それだけ見る方もデータの公開性、公共性を気にしているということなのでしょう

「感染事例が報告された場所の情報」(JX通信社)
「感染事例が報告された場所の情報」(JX通信社)
数字の入ったアイコンは、どの施設で何人の感染者が報告されたかを示したもの
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 ダッシュボードを構成するソースコードを公開したのは「読者から、信頼できるサイトだと見てほしかったから」としています。実際、芸能人を含め多くの人が「信頼できる」とSNSに投稿しています。「こういう報道を求めていた、という声はうれしかった。解釈を入れず可能な限り中立的な形で公開しているのが受け入れられた」と言っています。

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