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 1度目の緊急事態宣言では「ほぼ8割削減」を各地で達成できました。では、現在はどうなっているのでしょうか。「V-RESAS」に掲載されたデータを見てみましょう。V-RESASは地方創生の取り組みを情報面から支援するために、内閣府が提供しているサイトです。新型コロナウイルスが地域経済に与える影響を知るため、また感染症拡大の収束後に地域経済を再活性化させる施策立案に役立てられるよう、必要なデータを見える化しています。

 下のグラフは新宿駅と東京駅周辺における滞在人口の前年同週比の推移です。

滞在人口の前年同週比推移 新宿駅
出典:V-RESAS(「市区町村」データは非表示にした)
滞在人口の前年同週比推移 東京駅
出典:V-RESAS(「市区町村」データは非表示にした)

 前回の緊急事態宣言中はほぼマイナス80%近くまで減少していますが、以降はマイナス30%からマイナス40%程度にとどまっています。減ってはいるものの、この程度の減少では、感染拡大を食い止めるには不十分かもしれません。だからこそ、ヒートマップで見たように東京駅や新宿駅の周辺が常に赤黒いのでしょう。

 では、20年11月以降に感染が拡大した小田原駅や千葉駅周辺はどうでしょうか。

滞在人口の前年同週比推移 小田原駅
出典:V-RESAS(「市区町村」データは非表示にした)
滞在人口の前年同週比推移 千葉駅
出典:V-RESAS(「市区町村」データは非表示にした)

 これを見ると、小田原駅周辺も千葉駅周辺では、滞在人口は少ししか減っていないことが分かります。小田原駅周辺では20年11月以降は0%(推定居住地が県内の人)にまで高まっています。こうした状況で、「3密」や「感染リスクが高まる『5つの場面』」にさらされたら、より多くの人に感染が広がるのも当然です。

※感染リスクが高まる「5つの場面」:新型コロナウイルス感染症対策分科会が感染リスクが高まるとした「飲酒を伴う懇親会等」「大人数や長時間におよぶ飲食」「マスクなしでの会話」「狭い空間での共同生活」「居場所の切り替わり」のこと

 今回の緊急事態措置では、「リモートワークを強力に推進」も挙げられました。ただし、前回の緊急事態宣言時に唱えられた“8割、人との接触を減らす”とは違い、7割削減の対象は「出勤者数」でしかありません。かつ「達成すべきだ」ではなく「目指す」という目標にとどまっています。それでも、リモートワークの推進は感染対策の根本の1つである、「移動を減らす」ことに役立つことは確かでしょう。

 今回の緊急事態宣言には、時短要請に従わない飲食店の名前を公表することが盛り込まれました。感染対策の徹底のためというのなら、対策を実施しなかったときの影響の大きさから考えて、従業員に出社を強制し、かつ20時以降も働かせて密な環境を従業員に強制し続ける事業所の名前も同じように公表すべきでしょう。

感染対策を呼び掛けても、耳を傾けない人が生まれてしまった

 悩ましいのは、人々の心の持ちようが昨春とは違ってきていることです。1回目の緊急事態宣言時と違い、2回目を迎えた私たちは、その真偽はともかく新型コロナウイルスに関する「知見」や「経験」を増やしてきました。その結果、全く科学的な裏付けがないのに、「マスクをしなくても感染していない」「会食をしても感染しなかった」といった「生存者バイアス」(成功した都合のよい結果のみを基準に判断をし、それに付随する失敗、誤りを見過ごす人間の性質)に陥っている人たちが、一定数いるように思えます。

 感染する、感染しないを「確率論」で考えたとき、たまたま感染しなかったからといっても、この先も感染しないとは限りません。主観的な思い込みなど何の役にも立たないのです。この期に及んでも「私の周囲には感染者なんかいないから大丈夫」と言っている人がいて、私は心底驚きました。

 何より恐ろしいのは、いわゆる知識人と呼ばれる人たちの中に「コロナ脳」「インフルエンザの方が怖い」「コロナは専門家とメディアが作り上げたフェイクニュース」「コロナはたいしたことがないので経済を回し続けろ」と主張し続ける人がいることです。個人のオピニオンを止める権利は私にありませんが、感染後の後遺症について全容が解明されていないのに「死なないんだからいいだろ」と言わんばかりの発言があることにはさすがに驚きを隠せません。

 もはや、私たちは完全に分断されてしまいました。これまでの施策に色々とまずかった点はあると思いますし、その手法に疑問がないわけではありません。しかし、こうも「団結」できない状況が生まれるとは……。緊急事態宣言で感染対策を呼び掛けても、耳を傾けない人は一定数存在するのが現状です。そうしたことを前提にした対策、施策が必要になってきています。

 そのためには、国民を動かす政治家のリーダーシップも重要な要素となるのではないでしょうか。そこが1回目の緊急事態宣言が発出されたときと大きく変わったように思えます。