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上司を役職名で呼ばない文化、その狙いは?

寺田:分かりやすくなければ全員に伝わりません。「会社が目指すべき方向を誰に伝えたいのか」といえば、限られた一部の人たちではありませんから。

 「目線を同じにする気持ち」も大事です。社長なんて、ただでさえ偉そうに見られてしまいます。ですから意識的に、言葉の受け手のハードルを下げないといけません。

 そのために「社内では役職名で呼ばない」というルールも決めました。社長だろうが部長だろうが、全員「さん」付けで呼ぶこと。たまに「社長」と呼ばれると、いちいち「寺田さん、だろう」と正しています。すると徐々に、「さん付け文化」ができてきました。

北野:労働時間の削減を掲げる時に「年1800時間以内」という数字を出したのも印象的です。頭に数字が残りやすいですよね。

寺田:あれはなかなか好評でした。「1800時間」というのは休日と有給休暇20日間を除く、年224日に1日8時間の労働を掛けた数字(1792時間)が根拠になっています。

 これは自分で電卓を使って計算したんです。「よし、2020年までに年1800時間以内を目指そう」と決めた2017年より前は、年2033時間が平均でした。けれど今は、年1930時間まで削減されています。「ここからさらに頑張るぞ」とハッパをかけているところです。

北野:着実に成果が出ているんですね。

寺田:1800時間は、年間の総時間(365日×24時間)の2割でしかありません。睡眠時間を1日8時間、通勤時間を2~3時間と考えて、余った時間を「可処分時間」とすると、これが38%くらい。

 つまり労働時間の2倍近くを確保できることになるんです。そうすると、その時間で何をするかが非常に大事になってきます。「会社人間にはなるな。仕事は1800時間で切り上げて、成果を出して人生を楽しみなさい」と言い続けています。今年の春からは副業も解禁しました。

北野:その背景も聞きたいと思っていました。副業解禁の決め手は何だったのですか。

寺田:決め手も何も、「働き方の改革は生き方改革」というメッセージを出した途端、副業はオーケーになるはずです。社員一人ひとりの生き方を応援する会社が、副業を反対したらおかしいでしょう。

北野:副業を制限することは個人の生き方を制限することになってしまう、と。