行動するのが怖い、という気持ちも分かる

山口:決して大げさでなくて、私は高校時代まで柔道に本気で取り組んでいましたし、「体を動かす」が出発点になっていたことは事実です。
通っていた高校は進学校ではなかったんですが、必死に勉強して慶応義塾大学に入って、今度はどっぷり頭を使う世界へ。体から頭へ、両極に振って自分の世界が広がったことは、大きな体験になっていると思います。
北野:体から頭へ。すごいコース選択ですね。
山口:大学では国際開発学を専攻していました。在学中、米ワシントンの国際機関でインターンとして働いていたら、「途上国の現場を知らないとダメじゃん」という意識がムクムクと湧いてきて、当時、アジアの最貧国だったバングラデシュへ飛ぶんです。
これも両極に振る行動ですよね。両極の現場を実際に見てみると、それぞれの強みや良さを発見できるから、「合わせ技はないのかな」と知恵を絞る。やっぱり、現場を知るって問題解決のために大事だなと感じます。
北野:山口さんといえば、情熱的な経営者というイメージを持つ人が多いと思いますが、ご自身の感覚としてはいかがですか。
山口:全然しっくりきません。テレビ番組でたくさん取り上げられた直後は、たくさんの新規のお客様がお店にもいらして、「行動力の人ですね」「挑戦の人ですね」と声を掛けてくださいました。けれど、「私は工場でひたすらものを作る人なんだけどなぁ」というのが本音でした。
北野:バングラデシュに単身飛び込んで、現地で生産拠点を立ち上げたのに、「行動力がある」と自分では思わないんですか。
山口:飛び込むといっても、私、泣きながら行ってるから(笑)。だから、行動するのが怖いという人の気持ちはよく分かります。
今は現地の生産工場で毎日同じことを繰り返しているのが好き。もともと根暗なんです(笑)。毎日の繰り返しの中で生まれるちょっとした改善をコツコツと続けることに楽しみを見いだす方です。
でも、繰り返しているうちに、「あれ、実はもっとできるんじゃない」と可能性を発見する瞬間があって。平たんな道のりの延長にある未開への挑戦。私がやってきたことは、そういう感覚に近いです。
Powered by リゾーム?