とにかく行ってみる「身体的経営」

北野:今はゴールドマン・サックス出身で一緒にマザーハウスを創業した山崎大祐さんと2人代表取締役体制になっていますね。

山口:私はチーフデザイナーとしてクリエーティブの統括を、彼は販売やブランディングの統括を、と役割分担しています。私がゼロからイチを生み出すとしたら、彼はその1を10に広げてくれる人。

 さらにそれを国内外のスタッフが10を100にも、1000にも広げてくれる。ここ数年で、ようやくバランスが取れるようになってきました。

北野:山口さんご自身も、経営者として変化してきたと思いますか。

山口:どうでしょう。自分ではその変化を説明できるほど認識できていないんです。けれど、最新刊のタイトルにもした「サードウェイ(第3の道)」という考えは、ここ5年くらいで、私の行動指針になっています。

 「サードウェイ」の対極にあるのは、2つの概念の対立です。

 けれど私は、対立しそうな2つの概念が目の前に現れたとき、どちらかを捨てたり、玉虫色の折衷案で妥協したりせず、双方の強みを生かした新しい道を探ろうと思っています。それが「サードウェイ」なんですね。

 途上国の素材やマンパワーで先進国に売れるものを作る、という挑戦をする中であみ出した私なりの戦術と言ってもいいかもしれません。あとは、昔と比べたら少しは頭を使うようになったかな(笑)。

北野:昔だって頭を使っていたんじゃないですか。

山口:『裸でも生きる』ってタイトルに打ち上げるくらいですから、どちらかというと体を使って経営してました(笑)。とにかく行ってみる、作ってみる、という勢いで。

北野:すごい、身体的経営という新しい概念かもしれないです。

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