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補助金よりも大切な「余白」の存在

藤吉:反対意見を持つ市民グループにも、市長はあえて、居場所と出番をつくるんです。「公共事業の中でも、婚活事業や文化系の事業は市がやると、大抵、赤字になります。ですからぜひ、民間の力でやっていただきたい」と権限を渡すんです。

 議会の猛反対を押し切って「市民主役条例」を成立させて、市民をどんどん行政側に引っ張ってきちゃう。

 先述の「市長になりませんか?コンテスト」からスピンアウトしたプランを採用する形で市役所に「JK課」をつくって、女子高生を巻き込んだり。「若い子ばかり、不平等じゃないの」と年配女性が文句を言えば、「おばちゃん課」略して「OC課」をつくったり(笑)。とにかく、みんなを参加させるのが、すごくうまいリーダーなんですよね。

北野:居場所と出番というキーワードは、僕が今の時代に重要だと考えている「参加できる余白」というものにも近い気がします。

 今は、若い世代になるほど社会に出る前のメディアの参加体験比率が高いですよね。30年前、40年前の若者にとって、メディアというのは、新聞や雑誌など、「一部のプロしか“つくる側”にはなれないメディア」でした。

 けれど今の若者は、中高生時代から「ツイッター」や「フェイスブック」「TikTok」を使ってきた世代です。そして自分と同じようにそれらを使っていた同世代が、一瞬でスターになる姿も見ています。

 そんな世代にとって、体験の価値は「どれだけ“つくる側”になれるか」であると言ってもいいんじゃないか、と思うんです。

 僕のスニーカーファンの友人がこんなことを言っていたんです。「オレはナイキが大好きだけれど、ナイキの靴に100万円は払わない。だけど、ナイキの靴がデザインできるなら、100万円払う」と。これはすごく象徴的な考え方だなと納得しました。

 いかに気持ちよく参加率を高めていくのかは、重要かつ難しい課題なんでしょうね。行政が絡む問題で言えば、最近は「補助金はもらわないほうがいい」と考える人もいますし。逆転の発想が求められている気がします。

藤吉:補助金を用意して型通りの設計を依頼するのではなく、最初から全部任せて、「みなさんでやってください」と余白を増やすほうがうまくいくのかもしれません。

(対談中編は2019年8月23日公開予定)