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天才の創造性を承認できる秀才の存在

北野:素晴らしいですね。一連のお話を聞きながら、「才能を生かすポイント」をいくつか感じられました。

 流れでいうと、まずは竹部さんが既存のルールを無視した斬新なコンセプトを打ち上げたこと。それに対して周囲のほとんどが反発したけれど、権威ある市長は事実上のオーケーを出して、ものごとが進んでいったこと。

 この構造は、『天才を殺す凡人』では天才の創造性に対して、管理側の秀才が背中を押した部分に当てはまります。それによって実績が出るようになると、最初は反対していた周囲の凡人たちも強い共感性を持つようになった。

 つまり成否を分けたポイントは、「承認できる秀才がいた」という点である気がします。通常は承認が下りず、なかなかうまくいかないケースが多いと思うのですが、なぜ鯖江はうまくいったのでしょう。

藤吉:非常にいい形で三者がそろったからだと思います。三者というのは、リーダーとプレーヤー、サポーター。つまり、地方行政の理念を打ち出すリーダーである市長と、実際に現場を動かす起業家やNPOにいるプレーヤー、そしてサポーターとなる市民です。

 実は一番大事なのはこのサポーターで、マスコミはつい花形のリーダーやプレーヤーに光を当てがちです。すると日の目を見ないサポーターは面白くないから、連携がうまくいかなくなる。だからマスコミで取り上げられる地方ほど、失敗してしまうんです。

北野:あり得そうな話ですね。

藤吉:三者がうまくかみ合うことが大事で、鯖江の場合はリーダーである市長が、プレーヤーやサポーターを乗せるのが非常にうまかった。

 たとえ自分を批判したとしても上手に仲間にしたわけです。いわく「なぜ批判するのかというと、自分なりの軸足があって、頭を働かせているからだ」と。単に迎合するだけの人よりも、よほど強力にタッグを組める可能性が高いと言うのです。

 実際、今、「Hana道場」の運営にも携わっているジグジェイピー(jig.jp)会長の福野泰介さんは、最初は全く地方行政に興味を示していなかったそうです。それでも市長が、「未来の鯖江を引っ張る新しい産業をITの力でつくりましょうよ」と呼びかけて、とにかく持ち上げていった。

 福野さんも「そんなに市長が言うなら」と腰を上げかけるんですが、「でも市長、『ITでやっていこう!』と言いながら市長がブログもやっていないなんてダメじゃないですか。携帯電話も古いものを使っているし」と指摘をする。

 すると、市長は「分かりました。今すぐ替えましょう」と、翌日、本当にショップに行って最新機種に替えちゃうんです。そういう機動力をリーダー自ら見せるから、どんどん周りが巻き込まれていく。