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鯖江市を再生させた1人の女性の挑戦

藤吉:これは拙著『福井モデル』にも通じることですが、人を輝かせるのは居場所と出番。この2つと巡り合わせができない人たちがさまよっているのだと思います。

 なぜ巡り合いがないのか。理由を突き詰めて考えると、それはやっぱり「一歩を踏み出せるかどうか」の違いである気がするんです。

北野:僕は、天才が力を発揮する起爆剤として「共感の神」という存在、つまり周りにサポーターがいることの重要性を書いたつもりです。藤吉さんがこれまで見てきたケースで、「才能を支え合う関係性」はありましたか。

藤吉:周りを巻き込みながら大きなうねりをつくった事例は、『福井モデル』の中でも取り上げました。

 例えば、鯖江の竹部美樹さんという女性。地元の電器店に生まれた竹部さんは、短大進学を機に上京するんですが、田舎が恋しくて鯖江に戻ってくるんです。

 電器店での仕事ぶりも評判で、彼女はもう一度東京でチャレンジしようと上京して、IT系のベンチャー企業で働き始め、そこで初めて彼女は自分の才能を見つける。それは組織における“翻訳”という才能です。営業職とエンジニアは思いも違えば、言語すら異なるように聞こえて、仲が悪かった。

 そこで、20代だった彼女が立ち、高いコミュニケーション能力を発揮して、営業、エンジニア、ユーザーの言いたいことを翻訳して、つなぐようにサポートしたのです。

 こうして組織の中で自身の役割を発見して活躍した彼女は、もう1つの役割に気づいていきます。生まれ故郷の鯖江に思いを募らせているうちに、仕事で次々と気づきを得ている東京と地方との格差です。それは経済格差ではなく、若者たちの「体験の格差」です。

 そして東京で知り合った優秀な人材をどうやって地方に連れて来るかと考え始めます。しかも、お金をかけずに。

 そこで鯖江に帰ってリサーチを始め、生み出したアイデアというのが「市長をやりませんか?コンテスト」だったんです。

北野:インパクトのある企画ですね。

藤吉:正式名称は「鯖江市地域活性化プランコンテスト」といって、全国の大学生・大学院生(2019年から地元の高校生も含む)から、鯖江市を盛り上げるためのプランを募って、実現に向けた行動まで起こしてもらう課題解決型・若者主体のプロジェクトです。

 2019年で12回目を迎えて、今ではインテルやSAP、マイクロソフト、ヤフーといったそうそうたるグローバル企業も竹部さんたちの取り組みを支援するような、地方創生と人材育成の成功事例になっているんです。

 ただ最初からうまくいったわけではなくて、むしろ大変な騒動だったんです。