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「年上部下」に任せて生かす

北野:ミドルシニア層で、活躍できる人は、全体の何割くらいなのでしょうか。

田中:僕らの研究チームではそれを「躍進層」と呼んでいますが、それが全体の2割程度ですね。この割合は他の世代と比べても決して低くはありません。反対に、伸び悩む層は4割ほど。ここをどう活性化するかが、これからの重要なテーマになっていくと思います。

北野:どういう人たちが伸び悩んでいるのでしょう。

田中:50代前半の課長層に多く、「まだ昇進の見込みはある」と本人は出世に対する明るい希望を持っていることも特徴の一つです。役職定年一歩手前であることを考えると、決して出世の見通しが明るいとは言えないのですが。

 「働かないおじさん」と揶揄(やゆ)されがちですが、むしろ彼らは日々の仕事に忙しさを感じている人たちであることも分かっています。「会社に尽くしてこれだけやっているのに、どうして報われないんだ」という負の感情を抱え、能力の持って行き場を失っています。

 実際、会社や上司に対する満足度は非常に低いのですが、かといって転職や独立をする意向もなく、消極的な理由で会社にとどまっているというのが実態です。

北野:本当は能力があるとしたら、もったいないですよね。組織としてどういう働きかけをすれば、伸び悩む50代の才能をもう一度輝かせることができるのか。

田中:躍進につながるきっかけは「任せる」ことです。その人の能力や経験を尊重して、裁量を与える。例えば、社内調整力を強みとしている方であれば、難易度の高い社内調整を要するクロスファンクショナルなチームの運営を任せてみることも有効でしょう。

 一方、年下の上司が「○○部長には私から話しておきましたから」と気を回すことはかえって逆効果だということですね。

北野:年下上司の振る舞い方は、勉強になりますね。

田中:マネジメント研修などでよく傾聴が重要だといわれます。ただし、60代の部下に対しては、年下上司の方から傾聴より自己開示した方がいいということも明らかになっています。60代の方に「あなたは何がしたいんですか」と問うのではなく、「自分はこういうことを実現したい。そのために知恵を貸してほしい」とお願いする方が、彼らは力を発揮してくれます。

 あとミドル・シニア層に共通して言えるのは、経験値が豊富なばかりに、あれこれと考えすぎて初動に時間がかかるというケースです。そんなときには、初動だけサポートして、あとは任せるという関わり方も効果的です。

北野:初動をサポートするといいのは、若い部下や自信をなくしたメンバーのフォローをする時と同じですね。

田中:一言で「働かないおじさん」と片付けてしまわないで、もっと細かく見て、その人が能力を発揮しやすいきっかけづくりやコミュニケーションを試していくことが大事だと思います。