「働かないおじさん」はどうやって生まれる?

田中:ミドル・シニア層に関しては、以前、法政大学大学院の石山恒貴教授らとの共同研究で、4700人くらいのデータを分析して、活躍できる人と活躍できない人にどんな違いがあるのか、周囲とのコミュニケーションに注目して研究したことがあるんです。

 そこから見えた大事なことは、「個人の問題に帰属させない」ということでした。

北野:どういうことでしょうか。

田中:つまり「働かないおじさん」を「働かないおじさん」たらしめている要因は、会社が与える環境にもあるのではないか、という視点を持つべきだということです。

 会社は、彼らが本当に力を発揮できる仕事を与えているのか。もう一度、どこかで信じて任せてみる、という取り組みが大切なんです。

北野:成功事例をつくっていくことは必須でしょうね。同時に、「働かないおじさん」を量産する仕組みを会社が改善していく。

田中:実際に成功事例は出ていて、ある大手通信会社では、40~50代の部課長を集めて、「オープンイノベーション部隊」として、顧客の部長クラスと共同事業を立ち上げさせる取り組みを、10年ほど前からやっています。

 ポイントは、そこで成果を出した人を既存の事業部に戻すということ。つまり片道切符ではなく、「結果を出せば、既存の事業部に戻れて、昇進もできる」というキャリアパスをつくったわけです。

北野:才能ある若手は勝手に動きだすのでしょうが、やはりミドルシニア層はなかなか動きだせないでいる。彼らの才能を生かせるような組織をつくることが重要なんでしょうね。

田中:活躍するミドル・シニア層の行動パターンには、次のような5つの共通点がありました。「仕事を意味づける」「まずやってみる」「学びを生かす」「自ら人と関わる」「年下とうまくやる」です。

 一方でマイナスに働くのは「技能の世代継承」の役割を求められることです。黒子に回った途端、その力が発揮されなくなってしまうんです。

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