日本企業に枯渇する経営人材を育てたい

田中:もちろん信じていますよ。人間に才能が備わっていなければ、今の便利な文明社会は生まれなかったと思っていますから。ふとしたときに、「僕の才能とはいったい何なんだろう」とも考えます。30歳も半ばにして、いまだに見つかっていませんが(笑)。
北野:研究者に求められる才能とは、どういうものですか。
田中:本に書かれている3つの才能で言うなら、秀才の「再現性」と、凡人の「共感性」かもしれません。
特に僕が研究している人材マネジメントのような社会科学の分野は、常に研究対象となる現象や事例というものが存在します。言い換えれば、常に研究よりも先に実践がある。ですから、最先端を走っているのは常に現場にいる実務家だと思っています。
ですから、僕たち研究者には、実務家に対して共感性を持ち、学術の世界に閉じずに、実務に役立つ再現性の高い知見を見いだしていくことが求められます。
研究成果の9割は実務家からすれば、「あ、そうだよね」という反応が返ってくるもので、残りの1割で「目からウロコ」と言わせたら大成功という世界なんです。
北野:もしも田中先生が企業のCHRO(最高人事責任者)になったら、才能を生かすためにどんな取り組みをしますか。
田中:世の中では「人材不足」といわれていますが、日本企業において今、最も枯渇していると言っても過言ではないのは「経営人材」です。ですから、やはり「経営人材を育てること」に7割くらいのエネルギーを割くと思います。
北野:具体的にどういう施策を始めたいですか。
田中:次世代経営人材を早期に抜てきする仕組みをつくりたいですね。「結果も出していない段階でリーダー候補と言われても、誰もついていかないだろう」というアレルギー反応も生まれるでしょう。
ただ、これは移行期の問題であって、実際に戦略的に育成されたリーダーが輩出する時期を迎えれば、評価は変わってくるはずです。
北野:たしかに、まだ日本では見たことがない世界ですからね。ほかにはありますか。
田中:あとは経営層が自分たちで新規事業に挑むカルチャーを人事主導でつくっていけるといいですね。「メンバーに新規事業担当を任命する」という経営慣行を廃止して、経営者自ら新規事業担当を担っていただく。
北野:経営者の役割も変わっていきますよね。
(対談後編は、2019年8月9日公開予定)
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
Powered by リゾーム?