経営幹部はいつから育てればいい?

北野:選抜は、何歳くらいからスタートすべきでしょう。
田中:理想は、入り口の段階から分けることだと思います。つまり、新卒の入社時点で選抜する。ただし、入社後に定期的な入れ替え戦をやるんです。その時期も含めて、社員に対して選抜手法をオープンに説明しておくことも大事だと思います。
実は日本企業でも、人材の見極めについては早い段階からやっています。しかし、実際に昇進させるのが遅い。いわゆる「早い選抜・遅い昇進」という運用です。
なぜなら「君は将来の幹部候補です」という名指しが周囲に明らかになった時点で、選ばれなかった大多数の人のモチベーションが下がってしまうから。
公平性を過度に重んじた結果、本来育てるべき経営幹部候補の人材に対して、必要な育成支援が遅れてしまうのです。
北野:一部の企業では、幹部採用も導入しています。経営人材になり得る人に、共通要素はあるのでしょうか。
田中:リーダーシップ開発研究やリーダー育成研究という分野でこれまで世界的に研究が進められてきました。しかし、そのほとんどは海外の研究で、残念ながら日本企業の経営人材を対象にした研究は少なく、はっきりとしたことはまだ分かっていないというのが正直なところです。
北野:田中先生はご自分が経営人材になり得ると思いますか。
田中:僕は向いていないと思います(笑)。端的に言えば、経営層に求められる役割は変化を生み出すことであり、その変化に対処するのがマネジャーの仕事。
けれど僕の場合、変化をつくるわけでも、対処するわけでもなく、変化を生み出す人を輩出するメカニズムを解明したいという欲求が強い。ですから、本質的に会社の経営には向かないんです。
僕が社会に貢献できる役割があるとすれば、それは「変化を生み出す人を輩出する社会的なメカニズムを解明して伝えていくこと」だと思っています。
北野:田中先生の著書『「事業を創る人」の大研究』(クロスメディア・パブリッシング)で発信されてきたようなお仕事ですね。事業を創る人を生み出すシステムとして、何が一番重要だと思いますか。
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