自分の力だけで、才能は見つけられない

為末:まず「才能の気づきかた」に関しては、自分の力だけでは見つからないと思ったほうがいいですね。

 僕自身、競技者をやめた後は、ずっとビジネスマンに憧れていたけれど、具体的に何が自分にできるのかはあまり分かっていなかったんです。

 でも、何となく書いたり話していたりしたことが評価されるようになって、「へぇ、これが得意なんだ」と、周りから気づかせてもらいました。自分では息をするようにしていることでも、他人からほめられることがあれば、それは一つの才能の種になります。

 あとは、やっぱりいろんな場所に行ってみないと、自分の興味も行動のクセも分かりません。だから「とにかく動く」のはオススメです。さらに俯瞰(ふかん)して観察する「メタ認知力」を鍛えられたらいいですね。

北野:メタ認知力は、どうやって磨けるでしょうね。個人が自分の才能を見極める上でも、とても重要だと思うんですが。

為末:僕が大事にしているのは、自分への問いかけです。何かに興味を持ったとき、「どうしてこうなっているんだろう」と問うのと同時に、「なぜこれに関心を持ったんだろう」と自分に問いかけるようにすることです。

北野:それはすごくいい問いかけですね。今は「主観と客観」のバランスが求められる時代だと思っています。主観と客観の違いは、小説と脚本で説明すると少し分かりやすいかもしれません。

 村上春樹さんの書く小説は、徹底した“主観”だと言われていて、村上さん自身が「15歳の自分がもしここに行っていたら」という主観でストーリーが進むから読者も没入感を味わいながら引き込まれていく。作品の中の表現も「このとき、こう思った」という内面描写をストレートにしていますよね。

 一方で、僕が学んでいた脚本の世界は、映像化を前提としているので“客観”の目が求められます。登場人物の言葉やしぐさから感情を伝えてくんです。例えば「ヒロインが恋をしている」と表現するには「待ち合わせの前に、何度も化粧室に入って丁寧にメークをする」といった行動を書くことで、気持ちを描いていく。

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