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判断の9割は間違う。だから“朝礼朝改”

北野:中野さんご自身は、会社経営者として、役員や部下の方々にはどんなことをおっしゃってきたんですか。

中野:そもそもね、僕は役員とか社員とか区別をしていないんですよ。みんなまとめて「同僚」です。僕は社長をやっていましたけれど、それは単に“役割”であって、社長の役割を全うすればいいだけのこと。偉いとか偉くないとか、全く無意味です。

北野:社長の役割とは何でしょうか?

中野:早く決めることです。トップが1日でも早く決断することで、現場で働く皆さんが作業に費やせる時間が増えるでしょう。

北野:やはり決断の早さは大事だと考えていらっしゃる。

中野:大事です。なぜなら、僕たちは止まっているようで、実は宇宙空間の中ではものすごいスピードで動いているんですよ。明日が知れない世の中では、決められるのは今日のことくらいで、10年先のことを案じてもしょうがないでしょう。だから、今決められることをすぐ決める。これが僕の時間に対する考え方の1つです。

 一方で、人間の手作業にはスピードの限界があるので、いいものづくりを目指すときにはスピードを要求しません。職人が心ゆくまで制作できるように、十分なゆとりあるスケジュールを組むのと同じです。付加価値の高いモノやサービスを世に出すには、クオリティーの高い仕事ができる環境を用意しないと成り立ちませんからね。

北野:「今この瞬間でしょ」というスピード感と、「じっくりと付加価値の高いものづくりを」という待つ姿勢。この2つの両立は、難しくはないのでしょうか。

中野:シンプルに、手作業と頭の中の時間の流れを分けるということです。思考はいくらでもどこにでも飛ばすことができますから、頭の中はスピーディーに。一方で、人が手を動かす仕事には無理を言わないようにする。

北野:多くの会社、特に大企業は、逆の考え方になりやすいのかもしれないなと思いました。つまり、現場の作業には「早くしろ」とせかすけれど、経営方針の意思決定には時間をかけるというわけです。

中野:意思決定なんて、時間をかけたところで、正確な判断ができるとは限りませんよ。私自身の感覚では、ジャッジの9割は間違っている。でも、残りの1割でなんとか帳尻を合わせてカバーしているんですよ。人の能力なんて、その程度です。

北野:中野さんも9割間違っちゃうんですか?

中野:間違えますよ。僕はだいたい早起きして1時間くらい1人であれこれ考えて電話で指示を出すのですが、それから2時間後に出社する間に早くも後悔していますからね(笑)。僕は気が小さいし、自分の判断に自信がないほうだから、「あれで果たしてよかったのか」と考えちゃうんですよ。

 それで考えが変われば、“朝令朝改”で指示を修正します。2時間以内なら、現場もまだ本格的に動いていないので、ほぼ無傷で済みます。だから、後悔するなら2時間以内に(笑)。

北野:それだと現場で作成を進めている資料の修正も頻繁に生じて現場は困りませんか。