社員は育てた事業で自由に独立。議決権は放棄

北野:答えにくい質問かもしれないのですが、ガイアックスの時価総額や売り上げを見ていると、「スケール(拡大)する気はあまりないのかな」と感じることがあります。そもそもスケールを目指す形態ではないのか、スケールしたいけれどできていないのか、はたまた、先ほどおっしゃった資本主義を超える挑戦なのか。いかがでしょうか?

上田:伸ばすつもりはめちゃめちゃあります。ただ、そう見えないのはいくつか要因があって、まずは僕の力不足です。加えて、うちは会計に表れにくい経営上の取り組みをいろいろやっているんですよ。例えば、ガイアックスで生まれた事業は全て、その事業の担当者が会社にしていいルールにしています。

北野:いわゆるカーブアウトですね。

上田:はい。かつ、新株発行によって株の50%以上は新会社の経営陣やメンバーが保有できることになっていて、それを僕らは断れないという決まりをつくっています。

北野:え、断れないんですか。

上田:はい。実際、かなりハードに交渉されますよ。かつ、ガイアックスが持っている株に応じた議決権を「放棄してください」と要求する権利も渡しています。なので、例えば、第3者割当増資を実施してガイアックスの持ち株比率を下げていくのも、新会社経営陣の自由にできるようにしているんです。

北野:マジですか。それ……、ガイアックスの株主さんからは文句つかないんですか。

上田:ねぇ(笑)。僕もメンバーに「こういうふうにできるよ」と説明しながら、「ああ、この瞬間にガイアックスの企業価値の3分の1はぶっ飛んだかなぁ」と思っています。ガイアックスの持ち株比率がどんどん下がっていけば、新会社の業績を連結で十分に取り込めなくなりますから。

北野:経理部門の苦労が想像できます。めっちゃ大変だろうなぁ。

上田:本当に大変なんですよ(笑)。

北野:それでもなぜやるんですか?

上田:このほうが長期的には絶対にもうかると信じているんです。要は、どっちのほうが、起業家がのびのびとやりたいことを突き詰められるか?と考えた末の結論なんです。例えば、僕らがいつまでも議決権を保持しているのと、放棄しているのと、どちらがいいのか。

 もちろん、僕も言いたいことは言いますよ。「ここはこうして、こうすべきやで」と。でも、彼らは「はい、参考にさせてもらいます」で終わりです。そのほうが彼らは自由に飛躍できるはずです。会計や株価には全く反映されていない価値ではありますが。

北野:面白いですね。僕の著書1作目の『転職の思考法』でも書いたことなのですが、最近は既存の財務会計の基準では判断できない企業価値が増えてきていると感じています。まさにその例ですよね。

 昔はPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が重視されてきましたけれど、今となってはどれほどの意味があるのか。「米フェイスブックの一番の資産は何か」といわれたら、ユーザーのデータですよね。しかし、そんなものはBS(バランスシート)には載らないわけで。

上田:そうですよね。会計に載らない企業価値というものは増えてきていると僕も思います。(中編は4月14日に公開予定です)

(構成:宮本恵理子)

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