年齢に関係なく「will」を問う

北野:採用にあたっては、入社前に「本当にそれをうちでやるのがベストなのか?」と、しつこく確認すると聞きました。つまり、強烈な「will(意志)」があるかどうかを聞いている。

上田:そうですね。「自分がどうありたいか、何をしたいか」というwillを熟考する機会って、実はすごく少ない。就職活動で考える人は多いけれど、それ以降はほとんど考えていなかったりしますよね。年齢や経験を問わず、「いつでも何度でもwillを聞く」習慣が重要だと思っているんです。

北野:実際、何度でも聞くんですか? 繰り返し、繰り返し?

上田:はい、繰り返し聞きます。「最近、どうなの? 何がしたいの?」と何度でも。一方で、うちは「他人を自分のwillに巻き込むのも自由」というルールにしているんです。しかも、他のチームからの引き抜き自由。だから、事業部長たちが「うちのビジネス、すごいと思わへん? こっちに来いよ」と引き抜き合戦をやっています。リーダーの目の前で、堂々と他のリーダーがメンバーの引き抜きを始めるのも日常茶飯事ですよ。

北野:マジですか? まさか上田さんがスタッフを取られることも……?

上田:よくあります(笑)。でも、そのほうが絶対いいんですよ。その時々の自分のwillに響く環境で働くのが、一番パフォーマンスを上げられるはずなので。新入社員から「僕の配属、どうなりますかね?」と聞かれても、「今聞いてもしょうがないと思うよ。どうせ1カ月後には好きなところに移っているんだからさ」と返したくなる(笑)。

北野:面白いですね。「繰り返しwillを聞き続けることが大事」とおっしゃったのは、確かにそうだと思いました。最初はぼんやりとしたものであったとしても、繰り返し聞かれることで、輪郭が明らかになっていく効果もあるでしょうし。

上田:そうなんです。内なるwillを引き出すという意味では、もう1つ、効果的なサポートになっているんじゃないかと思い当たることがあります。それは「自己効力感」を与えること。うちのオフィスには、しょっちゅう卒業組がふらっとやってくるんですよ。

 自分よりそう年齢も変わらない、「もしかしたら自分のほうが実力は上じゃないか」と思えるくらいの先輩が上場したり、勢いのあるベンチャー経営者になっていたりするのに見慣れてくると、だんだんと「自分にもできるんじゃないか」という気持ちが芽生えてくるんです。

北野:身近なモデルに触れられる環境はすごく大事ですね。

上田:海外に行ったことがない高校生が『地球の歩き方』を一生懸命読んでも、なかなか実際に行くイメージは持てないかもしれないですが、同級生のほとんどが海外旅行経験者だったら、「俺だって行ったるぞ」と自然に思えるじゃないですか。環境は大事だと思いますね。

北野:僕もよく言うんです。自分の「2.5歩先」を進んでいる人を見るのが一番刺激になるよ、と。10歩先、20歩先だと遠過ぎて参考になりにくい。でも、上田さんがおっしゃるように、自分と同一線上にいる身近な人が達成しているゴールなら、自分にも達成できるというイメージを持てる。

 起業家輩出企業として注目されているサイバーエージェントのCHRO(人事最高責任者)、曽山哲人さんに「どうやったら、起業家志向の人材を採れるんですか?」と聞いたことがあるんです。すると、「いやいや、入社時点で起業志向のある新人は10%程度ですよ」という答えが返ってきました。「うちで働きながら先輩や同僚がどんどんチャレンジする姿を見るうちに、『自分にもできそう』と考えるようになるんです」というのです。

上田:うちで起きている現象と同じですね。

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