AIより先に、既に株式会社が暴走している

北野:上田さんの「インターネットの力でオープンでフェアな社会をつくりたい」という思いは分かりました。でも、「とはいえ、理想論じゃない?」という反論も出てくるのではないかと思います。目標に対する達成度は現時点で何点くらいだと思いますか?

上田:インターネット、特にソーシャルメディアとシェアリングエコノミーが普及してきたことによって、オープンでフェアな環境の達成度は20点くらいまでいっていますね。ただし、世の中の利用の浸透度としてはまだまだです。

 携帯電話を持っているのに、まだ待ち合わせ時刻をきっちり決めて出かけているような状況が、それを表しています。「じゃ、夕方に渋谷でね」とざっくり決めておいて、到着してからその場で連絡を取り合えば解決するのに、「17時に渋谷のどこにする?」と細かく決めないと気が済まない。いまだに旧社会のルールに縛られているという感じがします(笑)。

北野:なるほど。では、「理想論では?」と言われることに関してはどう反論しますか?

上田:現実社会で株式会社が引き起こしている問題に、もっと目を向けるべきだと思います。例えば、詐欺まがいの強引なセールスや、不幸な負債者を量産したサブプライムローン、本来は健康を提供すべき食の産業が抱えている農薬の問題や劣悪な労働環境などです。株式会社の肥大化によってむちゃくちゃなことが起きているのに、そのことに誰も気づかずに進んでいく。すごく怖いことだと僕は思うんです。

 この間、本を読んでいたら「制御不能となったAIが暴走して人間を支配する。そんな恐ろしい未来に耐えられるか」と書かれていたんです。僕からすると、「いやいや、会社という『法人』が今日時点で既に暴走しているでしょう?」と思うのです。

 おそらくこの構造は、社長の首を替えても変わらないです。誰が経営しても、会社という仕組みそのものが暴走装置になり得ると僕は思っているんです。

 インターネットによって個人同士がよりフラットにつながり、価値を交換し合える仕組みが浸透していけば、より自然でヘルシーな社会になるんじゃないか。そんな考えで、ガイアックスという会社ではいろんな新しい取り組みを実践してきました。

北野:確かに、ガイアックスの社員と話していると、「この人たち、人間の目をしてイキイキと話しているな」と感じることが多々あります。きっと、組織人でありながら、個人として生きることができているからでしょうね。

 ガイアックスは他の会社と、何が違うと思いますか? できれば誰でもすぐにまねできそうなヒントを教えてください。

上田:連載タイトル「才能を殺す組織、生かす組織」を聞いてふと思ったんですよ。「あ、うちは才能を生かせす側ではあるけれど、才能を生かす『組織』ではないな」と。

北野:どういうことですか?

上田:個々人が才能を生かした結果の成果物の余り物を、会社がいただいている感じなんです。

北野:なるほど。個々人というのは、ガイアックスで働いている人ということですね。

上田:はい。一人ひとりが本来秘めているパワーを爆発させたときに、ものすごい大きな価値が生まれる。ガイアックスはそのおこぼれをいただいているイメージです。

北野:例えるならば、「俺、これからカキをとってきます!」と大量にとってきたカキをムシャムシャと食べた後、「余ったから2~3個をガイアックスにあげます」みたいな。

上田:そう。付け加えるとしたら、「ちなみにさ、カキをとりにいくのはいいんだけど、人生かけてそれやりたい?」と問いかけるのが僕らの役割です。「世界最高のカキとり職人になりたいです!」と燃えていたら、ぜひ応援したいというスタンス。

北野:でも、それ、突き詰めていくと「ガイアックスという会社にいなくても、自分だけでできるかも」という発想になりませんか?

上田:なりますよ。そのときは、本当の意味でサポートします。起業を支援したり、人を紹介したり。「Nagatacho GRiD」というコワークオフィスを開放しているのも、支援の形の1つです。

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