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「才能を殺す組織」と「生かす組織」は何が違うのか。新卒採用のクラウドサービスを手掛けるワンキャリア(東京・渋谷)の取締役で作家の北野唯我氏が対談を通じて探っていくシリーズ連載。今回は、同連載のスピンアウト企画として2月13日に開催したRaise LIVEの模様をお送りする。

ゲストは、ガイアックスの上田祐司社長。ガイアックスは、自律的に動く個人が集まる「ティール組織」の典型として注目を集めている、極めてユニークな組織運営をしている会社。給料は社員が自分で決め、事業を持って独立することも自由。上田氏はなぜ、このような組織をつくったのか。前編は、従来の「会社」という枠組みに挑戦するかのような上田氏の思想に、北野氏が迫る。

2月13日のRaise LIVEに登壇したワンキャリア取締役の北野唯我氏(右)とガイアックス社長の上田祐司氏(左)(写真:竹井俊晴、以下同)

北野唯我・ワンキャリア取締役(以下、敬称略):今日は連載「才能を殺す組織、生かす組織」の特別編として、「Raise LIVE」と連動してお届けします。ゲストにお招きしたのは、ガイアックス社長の上田祐司さんです。上田さんが21年前に立ち上げたガイアックスは非常にユニークで、採用・育成など人材に関わる取り組みとともに独自のカルチャーを貫く組織としても知られています。ぜひ、創業者として込めてきた思想についてもじっくりと伺っていきたいと思います。

上田祐司・ガイアックス社長(以下、敬称略):ガイアックスの上田です。よろしくお願いします。

北野:上田さん、いきなりですが、僕がガイアックスという会社に抱いているイメージを一言で言うと、「意味の分からない会社」です(笑)。いろいろな人から「あの会社はユニーク過ぎる」という評判を聞いています。例えば「社員総会は出欠自由で、途中退席も自由」とか「給料を自分で決める」とか。「正確な社員数は誰も知らない」というのもありますね。これらは全部、本当ですか?

上田:はい、全部その通りです。

北野:会場の皆さんも、ちょっと信じられませんよね。でも、よく考えてみると、僕が「意味が分からない。信じられない」と感じるのは、「会社とはこうあるべきだ」という“固定観念”があるからなんです。

 僕はガイアックスという会社は、人間の欲求に寄り添う進化を遂げているんじゃないかと思っています。トレンドをマクロの視点で見ると、人間は間違いなくどんどんわがままになっているんですよ。かつては、「個人が好きなときに好きな場所で音楽を聴く」という発想すらなかったのに、携帯音楽プレーヤーの「ウォークマン」がそれを可能にし、カセットテープやCDではなくデジタルで何千曲も持ち歩ける「iPod」がウォークマンに取って代わり、さらに何千万曲もの音楽にアクセスできるスポティファイが登場して……と、人間の飽くなきわがままに応える商品やサービスがどんどん生まれている。

 わがままになることは決して悪いとは思いません。それは、人間が素直に“ありたい姿”に近づこうとしているということだからです。僕自身も本を書くときにはいつも、「人が人らしく働くための阻害要因を取り除く」という視点を大事にしています。

 ガイアックスという組織の思想も、人間の“ありたい姿”に近づこうとしているのではないかと感じているのですが、実際にはいかがでしょうか? 上田さんがどういう思想を広げたいと思っている経営者なのか、聞かせていただけませんか。

「知り合い優先主義」を壊したい

上田:分かりました。まず、僕が1999年に起業したきっかけは、「インターネットってすげぇな」と感動したことでした。赤の他人同士がコミュニケーションできるって、素晴らしいことだな、と。インターネット以前も、人類は赤の他人同士が協力して活動していくための装置をずっと求め続けてきて、その1つの答えとして導き出したシステムが「資本主義社会」だったのだと思います。

北野:そうですね。

上田:資本主義社会は感情から生まれたシステムなんです。「りんごを食べたい」「桃も食べたい」「もっと食べたい」という感情を数字の情報に換えて、世界中に流通させている。

 でも、この資本主義社会はかなり限界にきているなと感じます。インターネットのほうがよりピュアに、赤の他人同士での感情の交換を可能にしてくれる。だから、僕の思想としては、「資本主義社会を超えた、より心地いいコミュニケーションを広めたい」というのが根幹にあります。さらに言えば、「知り合い優先主義」を脱したい。

北野:「知り合い優先主義」とはなんですか?

上田:知り合いばかりを近くに置いて、知り合い同士でしか感情移入しない空気が嫌なんです。「友達しか隣の席に座っちゃ駄目」「うちに泊まりに来ていいのは親戚だけ」と相手を選ぶのは、人種差別とあまり変わらないんじゃないか? というのが僕の感覚です。