
投資は「勝ち負け」ではなく「勝つか学べるか」
北野:そういう学びの姿勢を、どうやって獲得してきたんですか? フィードバックをくれる誰かが常にいらっしゃったのかどうか。
藤野:フィードバックをくれるのは、常に“結果”です。株は必ず結果が出ますから、自分の判断が正しかったのか間違っていたのか、数日後か数カ月後、数年後といった時間軸の中で明確に数字として突き付けられるんです。その結果に対し、いかに言い訳せずに自分自身の問題として見つめられるか。
投資の世界では“勝つか負けるか”じゃない。“勝つか学ぶか”なんです。毎回勝てればいいんだけれど、なかなかそうはいかないから、失敗の中から次に勝てるための要素を学べるかどうかが長期的な勝率を上げるし、人間的な成長にもつながるのだと思っています。
北野:学び方が大事だということですね。成功する人の共通点は「粘り強さ」だともおっしゃっていますよね。考え方がポジティブかネガティブかはあまり関係なくて、最後までやり切る粘り強さが大事なんだ、と。確かにそうだと納得しました。
藤野:いるでしょ。やたらポジティブなのに、何もやらない人(笑)。口だけ番長ってやつ? 一番だまされるパターンですよね(笑)。どんなに才能やセンスがあったとしても、継続して努力できる人には勝てないなと本当に思います。そういうふうに世の中はできているんですね。
転職を後押し。ライバルに育ってほしい
北野:人の能力を最大化するのは「覚悟」なのかもしれないと、よく思うんです。能力ももちろん必要だけれど、能力は足し算くらいの効果しかないのに対し、「絶対にやってみせる」と覚悟を決めた途端、周りもどんどん手を貸してくれて、掛け算のように力が拡張していく。覚悟は0円で、すぐに始められることなのにすごいなと感じます。
人材育成の本質について、さらに伺わせてください。昨年、地方に呼んでいただいて200人くらいの経営者の皆さんを前にお話しさせていただく機会がありまして。会場から最後にいただいた質問で、「あれはどう答えればよかったのだろうか」と今でも心に引っかかっている問いがあるんです。
質問主は60代くらいの、おそらく20〜30人規模の工場経営をなさっている方だったのですが、「新卒から入って10年かけて一生懸命育ててきた社員が辞めました。そして、競合に転職して、取締役になったと聞き、眠れないほど悔しかったです。私はどうすればよかったでしょうか」とおっしゃって。その質問をいただく前に僕が話していたのは、「これからの強い会社の条件は、卒業生も活躍する会社です。社員が『いつでも転職できるけれど、この会社にずっといる』と思える会社が最強です」という内容だったのですが、「そうはいっても、優秀な社員をライバルに取られるのは耐えられない」という悲痛な叫びが上がったんです。藤野さんなら、どう答えるでしょうか?
藤野:当社においても辞めて転職や起業する人はいますよ。でも、離れてからも良好な関係が続いている場合が多いですね。おそらく、辞めた後により活躍してハッピーになることを僕が望んでいるからだと思います。
一番嫌なのは「辞めた後の社員が活躍しないこと」であり、一番望むのは「僕の最大のライバルになってくれること」なんですよ。高い壁として僕の前に立ちはだかってくれるときに、僕は「自分の仕事をしたな」と思えるので。事実、レオスを辞めた後に成功した人は結構いるんだけど、それがすごくうれしいし、誇らしいわけです。
別にいい人ぶっているわけでなく、経営者の僕にとってもそのほうがメリットがあるんですよ。なぜなら、「会社の中にいても幸せで、会社の外に出ても幸せになれる」という環境をつくれれば、絶対に優秀な人が集まってきますから。
北野:確かに。会社の採用戦略上も正しいということですね。
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