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北野:「その会社を好きと思えるか」という判断基準に近いのか、もう1つ、「その会社を応援したいと思えるか」という見方もできるものでしょうか?

 僕は最近、この「応援したい」という気持ちも大切にしていいんじゃないかなと思っているんです。2019年、勉強のためにエンジェル投資を少しだけ始めたのがきっかけなんですが、「会社に投資するときには、好きな野球チームを応援するような気持ちでいるのがいいのかも」と。

 僕、地元が兵庫県の甲子園球場から徒歩3分のところにあって、「いいときも悪いときも変わらず応援する阪神ファン」ってめっちゃいたなって。しかも、その姿って豊かで幸せそうだったよなぁと思うんです。

 僕は社会に出て、素晴らしい仕事を形にしている人たちにたくさん会っていく中で、心から「いいなぁ、この会社。すてきな会社だ。できれば働きたい」と思える職場がいくつもあって。今の立場上や物理的な時間の面で働くことは難しかったとしても、お金を渡すことを通じて応援できれば、それも一つの幸せなのかなと思うようになったんです。自分が応援できる対象が増えるのって、人生の幸福度や満足度を高める気がするんです。

 人生で一番後悔するのって、「本当は好きだったのに『好き』と言えなかったとき」じゃないかと僕は思っていて。例えば、感謝の気持ちを直接言えないまま親が他界してしまったり、「この仕事をやりたいです」と言えないままチャンスを逃してしまったり。友達が悩んでいるときに、「応援しているよ」という一言を伝えられなかったり。

 会社選びにおいても、「好きと思えるか」は確信できなかったとしても、「応援したいと思えるか」で判断してもいいのかもしれないと思ったのですが、いかがですか?

 藤野さんにとって「応援する」という行動はどういうものなのか教えてください。

投資基準は「応援したいか」「応援できるか」

藤野:僕の場合、特に未上場の会社を相手に投資するかどうかの判断をするときには、「応援したいか」と「応援できるか」という2つの観点でしか選ばないんです。

 「応援したいか」というのは、好き嫌いの判断です。やり遂げようとするビジョンやその会社の独自の技術に対しての共感や憧れ、リスペクトのようなものから生まれる感情ですね。

 一方で、「応援できるか」というのは自分側の能力の問題です。例えば、阪神のファンは「負けが続いているときにもチケットを買って応援する」という具体的行動によって、現実的に球団を助けることができるでしょう。これが「応援できる」という状態です。

 チケットを買うお金もなく、自分のノウハウを伝えられる貢献も何もできないとなれば、関係性を築きようがなく、応援したくても応援できない。その会社を具体的に応援できるリソースが自分にないと判断した場合には、僕は投資はしません。

 特に未上場のベンチャー企業というのは、経営は常に不安定でトラブルの連続なんですよ。いざというときには自分が乗り込んで、本当にどうしようもなければ自分がテイクオーバーして何とかする。それくらいのイメージを持てないと投資はしません。つまり、そんな行動も可能になるくらい、相手のこともビジネスのことも理解しているということですね。

(後編は3月17日掲載予定)

(構成:宮本恵理子)