才能を殺す組織と生かす組織は、何が違うのか。新卒採用のクラウドサービスを手掛けるワンキャリア(東京・渋谷)の取締役で作家の北野唯我氏が対談を通じて探っていくシリーズ連載。今回のゲストは、国内、海外の成長株への投資で知られる「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人氏。前編は、就職・転職先選びと投資先選びの共通項を語り合う。
どちらも「好きか嫌いか」が一番大切?

北野唯我氏(ワンキャリア取締役、以下敬称略):ファンドマネジャーとして第一線でご活躍されてきた藤野さんは、これまで多くの経営者と対面して直接話を聞き、投資すべき対象かどうかを見極めてきました。藤野さんの“本質を見抜く力”は何によって構成されるのでしょうか。順に伺いながら、解き明かしていきたいと思っています。
藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス社長、以下敬称略):どうぞ、なんでも聞いてください。
北野:ありがとうございます。では、早速最初の質問を。
僕は『転職の思考法』という本で、普通に働くビジネスパーソンが自分のマーケットバリューを高めるためにどうやって会社を選んだらいいのかを考えるための思考の軸を提示したつもりです。そのような思考の軸に、“投資家の視点”は非常に参考になるのではないかと感じたのですが、いかがでしょうか。つまり、転職先を選ぶときと、投資先を選ぶときに重視する項目は、本質的に通じるという仮説です。
藤野:はい。かなり近いと思います。
北野:藤野さんが特に重視しているのはどんな点ですか?
藤野:とてもシンプルかつ重要だと思っているのは、「その会社を好きか」という点です。そんな単純なこと? と思われるかもしれないけれど、「好きか・嫌いか」で物事を判断できる人は案外少ないんですよ。多くの人は「損か・得か」を重視し、「好きじゃないけれど、損しないほうを選ぶ」という決断に偏りがちなんです。
しかし、「損か・得か」を繰り返していくと審美眼はなかなか磨かれません。かつ、目先の得だけを重視することは長期的な利益にはつながらず、かえって損になる場合もある。だから僕は、投資においても就職においても、「自分がその会社を好きかどうか」という視点を大事にしてほしいと思うんです。しかも、それは今の時代にますます重要になっている。
北野:より重要になったのはなぜでしょうか?
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