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 それにしても、米国の対中強硬政策への急激なシフトは、中国にとって予想外であった。中国の識者からは、中国の過剰な自信が米国の中国脅威論の高まりにつながったとの分析も耳にした。鄧小平氏が指示した「韜光養晦(力を蓄え、時を待つ)」から胡錦濤氏の「積極有所作為(積極的になすべきことを少しだけなす)」、そして習近平氏の「奮発有為(発奮して何事かなさんとする)」へと、力をつけた中国は次第に低くしていた頭を高く上げて自己主張を強めるようになった。

鄧小平氏は「力を蓄え、時を待つ」と説いたが……(写真:Wally McNamee / Getty Images)

 これに対し、米国は2017年12月に発表した「国家安全保障戦略」で、中国を「技術、宣伝及び強制力を用い、米国の利益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」であると明記。18年10月には、ペンス副大統領が米中「新冷戦」の始まりを宣言するかのような演説を行った。

 この演説の内容と似通う本がある。マイケル・ピルズベリー氏が15年に発表した「China 2049」。トランプ米大統領にも近い中国専門家は同書で、中国が建国100周年の2049年までに「中国主導の国際秩序」の構築を目指していると指摘し、この中国の戦略を米国から世界の覇権を奪う「100年マラソン」と呼んで、警鐘を鳴らした。中国の大国意識とパワーの増大に伴う「奮発有為」への転換が米国の警戒感を高めたとのピルズベリー氏の指摘にうなずく専門家は少なくない。

 グローバル・ビジネスを展開する中国の友人も、中国で広がる過剰な自信が傲慢につながり、中国を実力以上に過大評価し、強気にさせていると分析し、懸念を示す。こうした懸念は中国の知識層の中では特に強い。