その手立てとなるのが、「一帯一路」だ。「互聨互通(connectivity)」の標語で強調される通り、「一帯一路」はヒト、モノ、カネを介した経済交流によって、アジアを中心に膨大なニーズがある経済インフラの整備を進める構想である。中国の過剰生産能力も背景に、中国が原材料・機械・技術・企業・労働者を丸抱えで「輸出」し、インフラを整備する「五味一体プロジェクト」とも言える。

 「アジア文明対話」の半月前には、北京で第2回「一帯一路」国際フォーラムが開催された。私は、欧米諸国を中心に「一帯一路」への批判や警戒感が高まる中で、今回のフォーラムが前回以上の規模となり、イメージを改善できるかに注目していた。結果的に、国家指導者の参加が前回より8人増えたことは成果と言える。特に、東南アジア諸国連合(ASEAN)から、批判的だったマレーシアのマハティール首相も含め、選挙を控えたインドネシアを除くすべての国の首脳が参加したことは、南シナ海問題を抱えつつも中国との経済協力への関心が依然として高いことを示した。

「一帯一路」のイメージ改善狙う

 その一方で、南アジアや中東、そしてラテン・アメリカの首脳の出席は限られた。カシミールを横切る経済回廊に反発するインドが前回に続き不参加で、中国への警戒感を強める米国も本国政府の代表を出すことはなかった(前回はNSCアジア上級部長が出席)。

 米中貿易経済関係が追加関税の応酬によって不透明感を増す中で、中国は他の諸国との貿易の拡大や投資の増大を必要とする。米中関係がこのフォーラムにも影を落としていたことは明らかだ。

 習主席の演説にもそのことがうかがわれた。習主席は、国際社会の懸念、特に「債務のわな」批判に答える形で、「一帯一路」プロジェクトが環境や資金の面で持続可能であることを確保するための「国際的に広く受け入れられた諸原則」を採用すると演説した。共同声明も、質の高さ、国際的なルールやスタンダード、開放・透明性に言及するものとなった。

 そして、「一帯一路」の国際イメージの改善や、より多くのパートナーの獲得のための戦略が「アジア文明対話」である。「一帯一路」が経済というハード・パワーの世界を中心とする対外戦略だとすれば、「アジア文明対話」は文化というソフト・パワーの世界を中心とする対外戦略であると言える。

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