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エンジニアはミュージシャンやアスリートと同じ

松本氏:マネックスグループの経営陣は最近、一気に若返った。経営者というのは、突然生まれるものじゃない。新入社員から経営している人はいなくて、おのおのの得意とする仕事で経験を積みながら、経営者として育っていく。つまり、経営能力とは別に核となる仕事がある。

 だが、デジタル領域のエンジニアというのは蓄積が関係のない世界。例えば、営業や商品設計、マーケティングなどの仕事はすべて経験や蓄積が必要な世界だけど、エンジニアについては「できる人はできる」。高校生でも世界一になれる世界だ。

 つまり、和田くんのようにエンジニア出身の経営者というのは、若かろうが既に半分の能力は持っている。

 あとマネックスグループがもともと年齢は一切関係のないフラットな企業風土を持っているということもある。

和田氏:最近思うのは、若い人たちが自らのエンジニア力でプロダクトを作れるようになったことで起業家が増え、またさらに下の世代が生まれていくという、いいエコシステムができてきたということ。もともとは簡単なスマホアプリを作るという領域が主戦場。でも、最近ではその市場は取り尽くされていて、金融や製造業といった領域に若いエンジニアが浸食し始めていると感じています。

 コインチェックはマネックスグループに入ったことで株主が変わりました。単にベンチャーキャピタル(VC)がマネックスグループに変わったということではなくて、その先に個人や機関投資家といった一般の株主がいるということです。会社が存続していくためのステークホルダーが変わりました。そこはきちんと意識していく必要があります。

松本氏:これまで、日興ビーンズ証券との経営統合、米トレードステーションの買収などいくつか経験してきたけど、コインチェックとの融合を考えると、これまでのどれとも違う。日興ビーンズ証券の場合は同じオンライン証券の統合だったし、トレードステーションの場合は国も文化も人も違うけど、オンライン証券という同じ領域での融合だった。コインチェックは国も文化も人も一緒だけど、全然やっていることが違う。

 異なる部分をどのくらい残しつつ、互いにシナジー効果を出していくか。まったく互いの融合がなければそもそも意味がないし、完全に同化してしまうとメリットが無くなってしまう。絡みの度合いをどうするかという点では大変な1年だったことは確か。

 私自身はCEO(最高経営責任者)として、若い人主導の企業の考え方からすごい刺激を受けている。

和田氏:マネックスグループ入りしてからこの1年を振り返ってみると、問題があったり、大変だったりする部分がありつつも何とかうまくやれたかなと考えています。金融庁による業務改善命令が1年近く続き、その間にサービスを段階的に再開させ、無事、仮想通貨交換業として登録できました。なかなかハードな1年でしたが、マネックスグループからはコンプライアンス強化の部分でかなり助けてもらったと思っています。

 逆に今個人的に感じている課題はコインチェック側からマネックスグループ側に提供するというところまで至っていないという点。一方的にもらっているだけで、技術的な部分での協力体制が築けていない。そこの強化を図っていかなくちゃと思っています。