和田晃一良氏 独占インタビュー

 2019年4月5日、パレスホテル東京の「葵の間」には、ソニーの現役役員やOB、IT企業社長など、そうそうたる顔ぶれが集まっていた。「マネックスグループ株式会社20周年記念パーティ」の会場にネクタイを締めたスーツ姿の和田晃一良氏がいた。

 和田氏は壇上にも上がり、マネックスグループの松本大会長兼代表執行役社長CEOが打ち出した「第二の創業」のアイコンとなっていた。

 「今、MONEXは創業時と同じように、ブロックチェーンを初めとする様々な新しいテクノロジーを眼前にし、その流れに乗ろうとするだけでなく、その流れに入りながらそれらを活用して自ら多くの変革を起こし、世界の資本市場のあり方に、我々が主体となって革命を起こすことを目的としていきたい」

 2017年10月27日に発表したミッションステートメントの中で、松本社長はこう記している。

 また、こうも記している。

 「伝統的な金融商品やサービスを更に充実させつつ、固定概念や古い常識に囚われずに、今の時代に必要とされているサービスをデザインし、提案していきたい」

 自らがエンジニアであり、創業者でもあった和田氏に寄せられる期待は大きい。コインチェック自らが起こした流出事故で、逆風が吹き荒れた国内の仮想通貨業界だが、和田氏は今、仮想通貨の未来をどう見ているのだろうか。

 初めてコインチェックを作ったとき、仮想通貨は決済手段として普及するのではないかという仮説を持っていた。だが、この仮説が大きく外れていたことを後に知ることとなった。越境EC(電子商取引)などには適しているが、日常生活の決済では普及が進まなかった。

 だが、そうはいっても仮想通貨のメリットは国を超えて手軽に送金できる点だ。この特性が如実に表れたのが仮想通貨で資金を調達する「ICO(Initial Coin Offering)」だろう。国境を越えて送金できるメリットが存分に生かされている領域だ。

 しかし、ICOは気軽にできる点が悪用され、詐欺的な案件が多いという問題を抱えていた。しかし、状況は少しずつ変わりつつある。あくまでも肌感覚だが、現在出てきているICOの案件はきちんとしたプロジェクトが多い。劇的に変わった資金調達方法によって、今後成功するプロジェクトが次々と出てくるとみている。

 マネックスグループに加わった今、僕はコインチェックの技術領域を主にリードしている。専属でセキュリティー対策強化を進める「サイバーセキュリティ推進部」を立ち上げ、常時ネットワークをモニタリングしたり、脆弱性をチェックしたりしている。第三者企業にお願いして外部からのペネトレーションテスト(侵入テスト)なども繰り返してきた。

 エンジニアの採用も拡大し、現在では当時と比べて2倍になった。今後は、海外からの採用も視野に入れている。加えて、マネックスグループの各社と技術面での連携も進めていく考えだ。

理想の経営者像は自分の中にある

 僕自身、エンジニアであり、経営者でもある。今後も仮想通貨事業は、「技術への深い理解」と「経営」を切り離すことはできないと考えている。コインチェックの前身であるレジュプレス時代から、基本的には1つのプロダクトに注力してやってきた。だが、今後はサービス規模が大きくなるにつれ、複数の事業を走らせていくことも出てくるだろう。どの領域にどのリソースを配分するのか、ポリシーを持って判断していく必要が出てくる。

 これまでも、これからも、時代に合ったプロダクトを作り出していきたい。だが、テクノロジーが先行したものを作っても、世の中からは受け入れられることはない。テクノロジーは手段でしかない。テクノロジーと経営の双方のバランスをうまく執りながら事業を進めていき、新しい経営者像を模索していく。自分に足りないことは周囲の協力を得ながら、挑戦していきたい。

 尊敬している経営者は特にいない。自分の中にある理想像を追い求め、模索しながら少しずつ体現していければしていければと考えている。