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「強制」ではもう人を動かせない

村上:終身雇用なんてもう無理だろうし、退職金も出ないに違いない。けれど、ひょっとしたら定年退職まで逃げ切れるかもしれない。それが40代後半~50代の意識ではないでしょうか。

 そんな彼らが、20歳くらい年の離れた新卒社員から「この仕事は何のためにやるんですか」と聞かれると、つい「四の五の言わずにやれ」と答えてしまう。僕だってかつてはそうでした。

 けれど「とにかく働いているうちに分かってくるから」はもう通用しません。若手に対して仕事の意義や意味が冷静に説明できないマネジャーはこの先、もう評価されません。だからこそ学び続けないといけないんです。

麻野:私はこれから、会社の「中」と「外」を分ける線がもっと溶けていくと思っています。

 例えばこれまで会社側は採用応募者に対して、共感してもらわないといけないから会社説明会や面接で、自社が目指すビジョンや仕事のやりがいなどを、懇切丁寧に伝えてきました。

 けれど実際に採用活動を終えて彼らが入社すると、そういったことはほとんど語られなくなる。そして「共感」ではなく「強制」で、つまり「この職場で認められないと人事考課が悪くなりますよ」「給料がもらえませんよ」「昇進できませんよ」とパワーだけで人を動かそうとするわけです。

 この先、雇用の流動化がさらに進めば、みんながビズリーチやリンクトイン、オープンワークを使うようになって、普段からいろいろな会社の情報が入るようになって、声もかけられるようになるはずです。すると、働いている人にとってはもう、会社の「中」も「外」もあまり関係がなくなるはずです。

「中」の人でも常に転職する機会を探すようになるでしょうし、会社側だって「外」の人に伝えるのと同じように、社員にビジョンを示していかないと求心力がなくなってしまう。

 職業を選択する権利を持つ一個人に対して、いかに共感してもらうか。そのスキルをマネジャーは培わないといけない。みんな、その思考の転換ができないまま、「給料をもらっているんだから、黙って働けよ」という感覚に陥っている。そこが問題なんです。

村上:この連載にも登場しているメルカリなどは、いち早くその変化に気づいていますよね。だからこそメルカリで働く人を伝えるオウンドメディア「mercan(メルカン)」に力を入れていたりする(詳細は「メルカリ小泉社長が明かす『僕らがリファラル採用ができるワケ』」、「メルカリが目指す『いつでも辞められるけど働き続けたい会社』」、「メルカリ流人材登用で判明!あなたはスカウトされる人材か?」)。

 「mercan」は、メルカリの「外」とコミュニケーションを取りつつ、社員も見ています。社内外に同じメッセージを発信して、同時に自分たちの職場は働きがいがあるということを、みんなが発信することも推奨している。

 今はソーシャルメディアの時代で、マスメディアが伝えるニュースに対する信頼度が下がっています。新聞やテレビよりも信頼する人から聞いた情報を、人々は信じる世界になっています。

 会社の情報だって、PRの手法で伝えられるものより、実際に働いている人のクチコミの方が、説得力がある。「mercan」のように日々リアルタイムに情報を発信し続けて接点を増やすことが、とても大切なんです。