果たして転職は「悪」なのか

村上:そもそも転職って、悪くないんです。「転職=悪」「転職とは裏切り行為である」という思考そのものが、昭和を引きずっているのではないでしょうか。「一生、死ぬまで働き続けると契約したのに、どうしてほかに浮気するんだ」というのがかつての転職のイメージでした。

 今はもうそんな時代ではありません。それなのに、なぜか転職にまつわる“後ろ暗さ”だけが文化として残っている。

 ただ、個人が社会人としてキャリアを重ねていく中では、常に市場と触れていなくてはなりません。SNSなどを活用して情報を収集したり、イベントに参加したり、勉強したり。そうやって常にアップデートしていないと、プロフェッショナルとして、変化の激しい時代に通用しないでしょう。

 リンクトインは、ビジネスパーソンにとって、常に自分が成長させられる場でありたい。自分のスキルや興味の対象を発信すると、そのコミュニティーに自然と人が集まってくる。同じ興味・関心を持つ人同士も集まるし、人と企業をつなぐこともある。

 欧米だと、中途採用でも、優秀な人材を探すチームが常に活動しています。皆さん、転職にはタイミングがありますよね。「今は違うけれど2〜3年後には検討する」とか。スカウトなどのプロフェッショナルは、市場が求める優秀な人に対して、3カ月に1回や半年に1回のペースで継続的に会って、状況を聞くようなコミュニケーションを重ねています。

 話を聞く個人の方もその事情をよく理解していて、「今は充実しているから動く気はないけれど、目の前のプロジェクトがあと半年で終わるから、その時にこんな仕事があれば話を聞きたいな」と伝えたりする。

 今後は日本も労働人口が減っていきますから、人材を探す方法はこの先、随分と変わっていくはずです。今は、転職したいと思っている人が、専用の転職サイトなどに登録して活動しますよね。これを「アクティブ・ジョブ・シーカー」といいます。

 けれどリンクトインは、特に転職する気がなくても、情報収集などでも使われている。弱いつながりが多くて、転職する気持ちも潜在的にはあるかもしれないけれど、それは会社次第、提案次第、と思っているユーザーも多いはずです。

麻野:私はこの令和という時代に、トヨタ自動車の豊田章男社長が終身雇用を難しいと言った事実を、いい機会にしたいと思っています。

 転職は、誰かにとがめられるような後ろ暗い行為ではなく、もっと前向きなものである。そういう価値観が広がればいいなと思っています。(後編に続く)