リンクトインとフェイスブックの違い

麻野:日本国内にいると分かりづらいのですが、海外では、ビジネスパーソンにとってリンクトインはどんな存在なのでしょう。

村上:少し乱暴な表現になりますが、英語圏の場合、リンクトインで名前を検索して出てこないと社会人ではないと認識されます。

麻野:感覚的には、ホームページのない企業の個人版、というイメージでしょうか。私たち日本のビジネスパーソンはどうしても、個人は企業に所属するという感覚がまだ根強い。ですからリンクトインのアカウントに代わるものといえば、日本ではまだ名刺なのかもしれません。けれどこれもやっぱり、「企業の中に個人がいる」感覚ですよね。

 リンクトインのアカウントを持つということは、個人が企業から独立して、自分自身のホームページを持つような感覚ではないでしょうか。

村上:名刺を使って自己紹介をすると、どうしても個人の名前よりも先に、所属している企業や部署の名前を言いますよね。日本ではそういった感覚がまだ強いように感じます。ただ一方で、最近では個人の名刺を持つ人も増えています。イベントなどで会う人の中には「私はここで働いているのですが、個人の名刺はこれで」と2枚の名刺を渡してくれるケースもあります。

 ツイッターなど個人のSNSアカウントを持っていたり、趣味やビジネスの文脈でも個人で活動したりする人が増えている。そんな印象を受けますね。そういった人にとってみれば、リンクトインはまさに企業がホームページを持つように、個人が自前でサイトを持っている、という感覚なのでしょう。特に若い世代ではそういった傾向が強いように感じます。

麻野:日本だとリンクトインよりも、フェイスブックを使うビジネスパーソンが多いように感じます。フェイスブックの位置付けは、日本と米国で違うのでしょうか。

村上:全く違います。フェイスブックでつながっているのは基本的にプライベートだけで、大学の同級生や家族、親戚が中心です。一方で、仕事の関係者とはリンクトインでつながっていく。やはり英語圏のユーザーが多くて、今では全世界で6億3000万人強が使っています。

 リンクトインが英語圏で使われている背景には、グローバルビジネスに携わる人が多いという事情もあります。英語を共通言語に、世界各地のビジネスパーソンがつながっている。ただ距離があるとすぐには会えませんから、電話やビデオを使った会議がメーンになる。このミーティングの前に、リンクトインで、自己紹介がてらプロフィルをつくっておくと話が早い。特に欧米はCV(履歴書)が定着していますから、皆さんそれを互いに公開して、その人のビジネスパーソンとしての歩みを理解し合っています。

 一方で日本は、CVの代わりに名刺が流通している。ただ名刺だけでは、自分のキャリアやスキルを棚卸しすることはできません。リンクトインのアカウントを作りながら、皆さんがキャリアの棚卸しをしてくれればうれしいですね。以前は会社の変遷しか書き込めませんでしたが、最近ではプロジェクトベースで書き込むこともできますから、箇条書きでもいいので、自分がこれまでやってきたことを整理してみるといいと思います。

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