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あなたは「スカウトされる」人材になれるか

麻野:私は、メルカリのような組織の形や採用のあり方を、10年後や15年後には、日本の大企業も普通に実践しているのではないかと思っています。逆にできていないところは衰退しているのではないか、と。

 これには1つ根拠があって、私と小泉さんがすごく好きな本が『ウォー・フォー・タレント』(エド・マイケルズ著、翔泳社)なんです。米コンサル大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントが、これからの時代の採用や組織について解説していますが、私はこれを15年前の駆け出しコンサルタントの時に読みました。

小泉:僕も覚えています。

麻野:当時は正直、「は?」と思ったんです。私は採用コンサルタントもやっていましたが、本書に書かれている会社なんてどこにあるんだ、と。それが15年前のこと。けれどその後、メルカリと小泉さんに出会い、驚きました。本に書かれている通りのことを実践していた。

 本当に採用候補となり得るような優秀な人材のデータベース「タレントプール」をつくって、人事が採用するのではなく、マネジャー全員が採用する。採用方法も、応募者の中から選ぶのではなく、採用したい理想の人材リストを作成して、アタックしていく。こんな姿勢が、ようやくメルカリ以外のスタートアップにも少しずつ広がりつつある。本を読んでから15年後のことです。

 採用そのものを根底から変えようとすると、またそれを日本の大企業が実践しようとすると、やはり時間はかかります。ただこれから15年後、もしかすると日本を代表するようなすべての企業がそれを実践している可能性だってある。

 企業が変わるのと同時に、個人も変わっていかなくてはなりません。

 企業が応募者の中から選ぶのではなく、タレントプールをつくって採用したい人に、個別にアクセスするようになるとどうなるか。個人だってタレントプールのリストに入るような人材にならないといけない。声がまったくかからない、という人だって出てしまいますよね。

 これまでは、1つの会社の中で異動をしながら、その時々の職場に合わせることが重要視されてきました。けれどこれからは「今度、うちの会社でこんなプロジェクトをやるけど、こういうことができる人っている?」「あの人、できるよね。声をかけてみよう」とプロジェクトベースで仕事が生まれるようになるはずです。その時に、たくさん声がかかる人と、一切かからない人が出てくる可能性がある。

 「ウォー・フォー・タレント」時代、企業もこれから15年かけて適応していくけれど、同じように個人も変わっていかなくてはならないんです。

小泉:メルカリでは、一人ひとりのパフォーマンスも大切にしていますが、それぞれの社員のポテンシャルや、その人がどんな仕事に挑戦したいと思っているのかも、見える化しようとしています。要は、社内に向けてどんなふうに情報発信をしていくか、ということです。