100人集めて、97人を落とす究極のムダ

小泉:それが僕たちなりに必要な人材を定義した上で、その定義に合う魅力的な人材に声を掛けたり、メルカリ内で働く人々の様子を掲載するオウンドメディア「mercan(メルカン)」を立ち上げたりすることでした。

 「mercan」を通して情報発信を重ねながら、別に今、就職活動をしていない人であっても、メルカリに振り向かせるための努力を続けてきたんです。あと僕はもともと、10人採用するなら、10人に声を掛けたいなと思っていました。それが最もムダがありませんから。

麻野:これまでのような、新卒一括採用をベースに組み上げられた仕組みとは全く違う発想ですよね。これまでは、たった3人採用する場合でも、まず求人広告で募集をかけて、「こんなに応募があってよかったね」なんて言いながら、100人の応募者の中から選んでいたわけです。

 冷静に考えれば、これは企業にも個人にもムダが多い。採用したい3人に最初からアプローチできる方法を突きつめると、やはりリファラル採用に行きつくように思います。

小泉:新しく採用した人が合うかどうかは、今いるメンバーがメルカリという会社のミッションやバリュー、社風を感じながら、自分たちの仲間として受け入れられるかにかかっています。そんな意識が浸透している組織は強い。だからこそ僕はまず、ミッションとバリューを徹底的に共有することにしたんです。

 会社が大きくなると、少しずつ社員の多様性も豊かになります。特に最近は、メルペイというフィンテック事業を始めたり、海外での採用を強化したりして、いろいろな人が入ってきています。

 それでも、ベースにあるのはミッションとバリュー。それを土台に文化をつくる。ミッションとバリューを社員がきっちり理解していれば、採用したい人物像も明確に見える。だから、バックグラウンドが多様性に富んだ人を採用してもブレることがありません。

メルカリが企業情報サイトに掲出している自社のミッションとバリュー
メルカリが企業情報サイトに掲出している自社のミッションとバリュー

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