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 令和という新しい時代に突入し、企業と個人の結びつきが大きく変わろうとしている。特に最近、多くのビジネスパーソンにとって印象的だったのが、トヨタ自動車の豊田章男社長の発言ではないだろうか。「終身雇用を守っていくのが難しい局面に入ってきた」――。経団連の中西宏明会長も、終身雇用について「制度疲労を起こしている」と語った。戦後の経済発展を支えてきた日本企業が、相次いで「終身雇用」という仕組みが続かないと明かしたのだ。昭和と平成を貫いてきた企業と個人の関係が曲がり角を迎えている。その先にある新しいカンケイとは。

 本連載では、国内最大級の社員クチコミサイト「OpenWork(オープンワーク)」を運営するオープンワークの副社長や、組織・人材コンサルティング会社リンクアンドモチベーションの取締役を務める麻野耕司氏が、令和時代の新しい企業と個人の関係について解説する。連載3回目からは企業と個人が「オープンな関係」を構築していると麻野氏が評価するメルカリの小泉文明社長が登場。これからの企業と個人の関係について語ってもらった。対談前編はメルカリの採用制度について。同社はリファラル(紹介)採用に力を入れているが、それはなぜか。

(聞き手/日経ビジネス編集部 日野なおみ)

メルカリ社長の小泉文明氏(写真左)とオープンワーク副社長の麻野耕司氏(撮影:竹井俊晴、ほかも同じ)

麻野氏(以下、麻野):令和の時代、企業と個人の関係は大きく変わると思っています。昭和の時代は「年功序列」「終身雇用」「新卒一括採用」という3種の神器で、企業も個人もハッピーでした。ただ一方で、これはとてもクローズなシステムでもあった。一度企業に入ると閉ざされて、外から中の様子を見ることができませんでしたから。

 平成は、昭和に出来上がった制度が崩れつつある中で、次に構築すべき仕組みを模索していた時代でした。そして令和という新時代に突入し、いよいよ新しいシステムが動きだそうとしています。ちょうど先日、トヨタ自動車の豊田章男社長が、「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」とおっしゃったのも象徴的な出来事でした。

 令和時代の新しい企業と個人の関係について考えたとき、特に話を聞いてみたいと思ったのがメルカリでした。私は、メルカリは非常に先取りをしてきた企業だと思っています。社長である小泉(文明)さんが何を考え、どのように動いてきたのか。今回はしっかりとお話を聞いてみようと思います。

 まずメルカリは、社員から推薦を受けた人を採る「リファラル(紹介)採用」に力を入れています。求人広告を出して人材を募集するよりは、一緒に働きたいと思う人に狙いを定めて口説いている。なぜリファラル採用に力を入れているのでしょう。

小泉氏(以下、小泉):そもそも日本で実施されてきた新卒一括採用というのは、どちらかというと、ある程度余裕のある企業の採用スタイルなのだと思います。

 大手の求人サイトなどは、大量に就活生を集め、そこに向けて企業が大規模な広告を打つ仕組みです。企業側は集まった応募の中から確率論でふるいにかけて内定者を決めていく。これはある程度、余裕のある企業でないと難しい。

 一方、スタートアップはそれができません。特に会社を立ち上げる段階では、知名度もなければ将来性も未知数です。経営には余裕がないから1円たりともムダなお金は使えません。そんな環境の中で、少しでも優秀な人材を採用しようとすると、別の方法を考えなくてはなりません。