令和という新しい時代に突入し、企業と個人の結びつきが大きく変わろうとしている。特に最近、多くのビジネスパーソンにとって印象的だったのが、トヨタ自動車の豊田章男社長の発言ではないだろうか。「終身雇用を守っていくのが難しい局面に入ってきた」――。経団連の中西宏明会長も、終身雇用について「制度疲労を起こしている」と語った。戦後の経済発展を支えてきた日本企業が、相次いで「終身雇用」という仕組みが続かないと明かしたのだ。昭和と平成を貫いてきた企業と個人の関係が曲がり角を迎えている。その先にある新しいカンケイとは。
本連載では、国内最大級の社員クチコミサイト「OpenWork(オープンワーク)」を運営するオープンワークの副社長や、組織・人材コンサルティング会社リンクアンドモチベーションの取締役を務める麻野耕司氏が、令和時代の新しい企業と個人の関係について解説する。連載2回目は、麻野氏が副社長を務めるオープンワークが現在展開しているキャンペーンについて。同社では5月27日から、新宿駅のメトロプロムナード(丸の内線地下連絡通路)に、オープンワークで評価の高い働きがいのある企業100社の「社員クチコミ本」を展示・公開している。その狙いは何か。
(聞き手/日経ビジネス編集部 日野なおみ)

2003年、慶応義塾大学法学部卒業。リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に、当時最年少で着任。気鋭のコンサルタントとして、名だたる成長企業の組織変革を手掛ける。2013年、成長ベンチャー企業向けの投資事業を立ち上げ、全く新しい投資スタイルで複数の投資先を上場に導く。2016年、国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げ。国内HRTechの牽引役として注目を集める。2018年、同社取締役に着任。同年、ヴォーカーズ(現オープンワーク)副社長を兼任。国内最大級の社員クチコミサイト「OpenWork」を展開。著書『THE TEAM~5つの法則~』(幻冬舎)は発売1カ月で6万部を突破。
連載1回目では、変わる企業と個人の関係についてうかがいました(「終身雇用の崩壊で、若手社員の給与アップってホント!?」)。令和の時代には日本でも中途採用が活発化し、優秀な中途を採るには、企業側が終身雇用や年功序列を続けるのは難しい、というお話でした。ほかにも大企業が優秀な人材を採用するために、変わっていかなくてはならないポイントなどはあるのでしょうか。
麻野氏(以下、麻野):制度だけでなく、企業の情報発信も大きく変わっていくはずです。昭和や平成の時代、就活生や転職を検討するビジネスパーソンに対して、企業は自分たちの伝えたい情報ばかりを発信していました。少し乱暴な表現になりますが、それは情報操作ができる時代でもあったからです。
けれど令和の時代に優秀な人材を採用したいなら、企業の情報開示は必須になる。今ほどインターネットが普及すると、会社の「中」の情報は、放っておいてもツイッターなどのSNS(交流サイト)や私たちが手掛けている国内最大級の社員クチコミサイト「OpenWork(オープンワーク)」などから漏れ出します。であれば、会社が自分たちから情報を外に出していった方がいい。
「オープンワーク」はビジネスパーソンの間でも定評があるそうですね。
麻野:存在感は確実に年々大きくなっています。特にこの5~6年の変化が顕著です。今では「オープンワーク」の累積登録者数は296万人、月間の登録ユーザー増加数でも、大手就活サイトと肩を並べる規模に成長しています。
利用者が「オープンワーク」で、気になる企業のクチコミを見るには、最初にやや面倒な手続きが必要です。在籍中もしくは退職したの企業に関するリポートに回答したり、転職サービスに登録したり(社会人の場合)。それでもクチコミを見たいのでしょうか。
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