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衝撃!年功序列の崩壊で若手の給与は上がる

麻野:終身雇用と年功序列が崩壊すると、給与は「即時清算」に変わります。即時清算とは、その言葉通り、すぐに清算する、という意味です。

 年功序列というシステムは、本来ならばその時にもらうべき報酬が支払われず、定年まで働いた後で退職金としてまとめてもらう仕組みである、とも言えます。最後まで働き続けることができれば、給料は上がっていく。

 日本企業の報酬設計を見ると、やはり50代で一気に給料が上がるようにできていますよね。そして最後に退職金として、若い頃に貢献した分もまとめて多額の報酬が支払われます。ただこれは、途中で辞めるとすごく損な仕組みでもあるわけです。

20~30代の若手社員が稼いだ売り上げや利益に対して、報酬として支払われている給料は少ないんですね。

麻野:少ないですよね。一方で上の世代の人たちは本来稼いだ金額よりも多めに給与をもらっているはずです。

 ただこの先、流動雇用が浸透すれば、年功序列で給料の上がる50代まで勤め上げる前に、会社を辞める社員が増えていきます。優秀な若手を引き留めるには、やはり年功序列ではなく、その時々のパフォーマンスに対して給料を支払う即時清算の形に変わっていかなければいけません。

つまり即時清算が浸透した方が、働き盛りの世代は年収が上がる、と。

麻野:そうなっていかないとおかしいでしょうね。そして、きちんとパフォーマンスに報いる給与設計ができている企業は、若くて優秀な労働力を生かして成長するはずです。半面、そういった制度が整っていないと、若者たちは損をするので離れてしまう。

 一番残酷なのは、年功序列の会社に入って、若い頃は成果を出した分の給料が支払われず、50代になった時に企業から「やっぱりもう年功序列はやめます」と言われることでしょう。これは今後、本当に個人が気を付けなければならないポイントです。

 ただ社会全体としては、間違いなく即時清算に変わっていくはずです。流動雇用と即時清算。これによって私たち個人は、会社に縛られて働くのではなく、自分たちで望んで仕事を選ぶようになっていく。

「流動雇用」「即時清算」「常時採用」……令和時代の企業と個人のオープンな関係は、現状ではどのくらい浸透しているのでしょうか。

麻野:例えばハイクラスな人材に特化した会員制転職サイトの「ビズリーチ」の場合、サービスを始めた当初は外資系企業とベンチャー企業の利用が中心でした。ビズリーチの強みの1つは、幹部を他社からスカウトして登用できる点ですが、幹部というポジションに社外の人材を起用しようとしていたのは、数年前なら外資系とベンチャーだった、というわけです。

 けれど今は、国内外の名だたる大企業や地方の中小企業がビズリーチを使って幹部を募集しています。これは言い換えれば、日本の大企業も幹部にふさわしい人材を社外から見つけてこようという意識に変わった、ということです。

 それまで幹部クラスの転職と言えば、専門のヘッドハンティング会社などがありました。ただそこを利用するには高額の料金を支払う必要があった。ビズリーチはそれをもっと手軽な形に変えました。またビズリーチには「今、転職したい」わけではない人も登録しています。つまり“転職潜在層”にもアプローチできる。こういったサービスが普及した結果、中途社員の転職活動も少しずつオープンになってきました。

 そしてここから先は、雇用の流動化が一気に加速すると考えています。

背中を押した要因は何だったのでしょうか。

麻野:経団連会長を務める日立製作所の中西宏明会長と、トヨタ自動車の豊田章男社長が、それぞれ「終身雇用が厳しい」と発言されました。