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ベンチャーから大手への転職が増加

麻野:私は自分が就職活動をしていた時、大手とベンチャーの両方を回っていました。当時、先輩からは「まずは大手企業に勤めておいた方が、つぶしがきくよ」とアドバイスを受けていました。

 要は、新卒で大手企業に勤めた後でベンチャーに行くことはあり得るけれど、キャリアをベンチャーからスタートさせて大手企業に転職することはあり得ない、というわけです。

 けれど今の時代、ベンチャーから大手企業に転職するのはそんなに難しくはありません。もちろん、実際に転職できるかどうかは人によります。ただそれでも、かつてならほとんど中途採用をしなかったような総合商社や大手広告代理店が、今では普通に中途社員を募集しています。

なぜ大手企業が中途採用を実施するようになったのでしょう。

麻野:環境変化のスピードの速さに、社内の人材だけでは対応できなくなってきていることが大きいと思います。今ではどの企業も、インターネットやAI(人工知能)などの新しいテクノロジーに力を入れていますよね。ただ、こういった新たなテクノロジーを駆使できる人材を、社内で育ててきているケースは極めて少ない。つまり外から採用するしかないわけです。

 例えば電通なども、今ほどインターネット広告が伸びてくると、やはりインターネット広告代理店から転職者を受け入れたりします。

 これまで新卒一括採用に取り組んできた企業も、あらゆるポジションを常に外から迎え入れる常時採用へ切り替えていくはずです。

麻野さんが新卒でリンクアンドモチベーションに入社した2003年当時はまだ、大企業がベンチャーなどから中途採用するケースは少なかったはずです。それなのに、あえてベンチャーに就職したのは、それなりの覚悟があったのでしょうか。

麻野:当時の私には特に大した戦略や方針もなくて、就職活動の最後に総合商社とリンクアンドモチベーションで迷って、何となくやりたいことができそうな方を選びました。

 悲壮な覚悟があったわけではないけれど、やはり先輩からは「一度ベンチャーに行ったらもう大手には行けないよ」といったアドバイスも受けました。親にも反対されました。

 当時のリンクアンドモチベーションは創業2年、社員数50人規模の会社でしたから、大人たちのアドバイスもよく理解できます。そして正直、私自身も当時は「怖いな」と思っていました。

 ただ、今になって分かるのは、当時の大人たちが言っていたような社会にはなっていない、ということです。

 繰り返しますが、今や企業は終身雇用から流動雇用に変わって、自社だけで人材が調達しきれない場合には、躊躇(ちゅうちょ)せず、外部から人を採るようになっています。

 幅広い企業がオープンイノベーションと言っていますが、今後は事業ばかりではなく、採用面でももっとオープンになっていく。特定のポジションを、社内からだけでなく、社外からも集めていくような常時採用の時代になっていくのです。

終身雇用が崩壊すると、給与体系なども変わるのでしょうか。